第20話
「うおおおお!」
めっちゃ掘る。
「ぬおおおお!」
めっちゃ運ぶ。
「ふんぬぅぅぅ!」
めっちゃ探す。
額に流れる汗をぬぐいつつ、俺の鉱山バイトは今日も絶好調だった。
見よ! 日々の肉体労働で鍛え上げたこの筋肉を!
肩を並べたドワーフ達に引けを取らずに動ける俺は、みんなの視線を独り占めである。
「こらダイキチ! むやみやたらと叫ぶんじゃねぇ!」
「すんません!」
……ダン親方に怒られてしまった。
まぁ、気合いというのは入れ過ぎると空回りするものだ、何事も塩梅が大事という事か。
ただ気合は伝わったようで、鉱山夫のドワーフのおっちゃん達は楽しげに話しかけてきた。
「おう、上機嫌だなダイキチ。なんかいいことあったのか?」
「あったさー。ちょっと臨時収入があってさー」
「ほんとか? そいつは景気がいいな! よし奢れ!」
「いいぜー? ドラゴンもやっつけられたし、今日も平和に乾杯だ!」
「ああそうらしいな! 騎士団が倒したんだって? だが平和つーには物騒だぜ。他にもここいらも最近は物騒な噂が多いからな。ドラゴンの他にも変なモンスターが出てるらしいって聞いたぞ?」
てっきりドラゴンもいなくなって平和を取り戻したとばかり思っていたのだが、噂好きのドワーフ、ワキさんの語る噂は妙に気になるものだった。
「んん? なにそれ? なんか出たのか?」
「そうか! 知らないか! なら教えてやろう! 最近妙な鎧を着たモンスターが出るって話は知ってるか?」
「いや……知らない。なんだそれ?」
こちらが知らないと知ると、ワキさんは喜んで続きを話し始めた。
ひょっとして俺の事かな? なんて思ったが、どうやら違うみたいだった。
「ここのところ目撃されてるおかしなモンスターだ。一見するとオークのようだが、物々しい鎧を着ていて、白い煙を吐くらしい」
「白い煙?」
「おうとも、煙だったと思うぞ。恐ろしく強くて冒険者が何人かやられたって話だ。酒飲み友達の冒険者が言っとったぞ」
オークというのは猪のような顔を持つ人型のモンスターだったはずだ。
大柄で、生命力が強く怪力で知られていて、危険度はかなり高いと聞いたことがあった。
「はー。なんかドラゴンといい。オークといい。このあたりって物騒だったんだなぁ」
「本当になぁ。物騒な話だよ。妙なことが起こんなきゃいいがなぁ」
つい噂話に花を咲かせてしまったが、とうとうダン親方から雷が落ちる。
「お前ら! いい加減無駄口叩いてないで手を動かせ!」
「「へい! 親方!」」
またもや失敗。気をつけねば。
俺は今度こそ真剣にツルハシを振る作業に没頭しているとカキンといつもと違う感触に行き当たった。
「お?」
その周辺を今度は丁寧に掘り進め、ぼんやりと輝く鉱石を見つけた。
俺はそれをまじまじと観察して、確信を込めて叫んでいた。
「おおお! 魔石だ! 親方!」
「おお出たか! よくやったな!」
沸き立つドワーフ達に交じって俺も大いに喜ぶ。
再び訪れたちょっとした好景気の兆しに、俺の持つツルハシにも一層力がこもった。
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