第33話 化学室の決戦1

河野さん、佐藤さん、浜野さんには、先に化学室に戻ってもらった後、俺と木滝さんは、体育館倉庫の掃除が終わったという報告を担任にしていた。


「よし、これで解散していいぞ。もしここに残るんだったら、最終下校時間の午後6時半までには学校出るんだぞ? あと、木滝と付き合ってるからってその......やるべき事をやらないっていうのは、無しだぞ?」


「いや、付き合ってませんから......失礼しました」


ちゃんと誤解は解けているのかの心配をしながら、俺は職員室を出た。


「ふふ、誤解されてるね?」


担任とのやり取りを盗み聞きしていたのか、木滝さんは先程の話を知っているような口ぶりで話した。


「その誤解、いいものなんですかね......?」


「どうだろうね? それより、まだやること、あるんじゃない?」


木滝さんはすぐ近くの通路を指さしながら、少し嫌そうな顔をしてそう言った。


あの通路の先には、家庭科室や英語や数学の準備室の他に、化学室もある。

化学室には、木滝さんにとっては、おそらくあまり会いたい人ではない千藤がいるかもしれない。


「さっき、倉庫で話した話の続き、多分するから」


木滝さんは、俺の方ではなく、化学室がある通路の上を見て、震える声でそう言った後、そのまま通路に向かって歩いていった。


顔を俺に見せないようにしていたのかどうかは分からないが、木滝さんがどんな表情をしていたのか、俺には分からなかった。





先に化学室に入ってしまった木滝さんの後に、俺は化学室の入室した。


中にいるのは、窓際に立っている河野さんら3人、椅子に座って、真正面にいる男を見ている木滝さん、そして、他校の制服を身につけた、金髪で、左耳にピアスをしている男━━━━━━写真の人物、千藤がいた。


千藤は、あとから入ってきた俺をチラリと見て、木滝さんに視線を戻した。


「裕也、私に何か用でもある?」


表情は見えない。

ただ、声だけを聞けばわかる。

相当怒っている。

対して千藤は━━━━━━


「うわぁ、怖い怖い」


怒ってる木滝さんを煽っているのか、少しヘラヘラした様子でそう言った。


「裕也、アンタは何がしたいの?」


木滝さんの変わらない質問に、ため息をついた後、千藤はキレ気味に言った。


「お前こそ、そこの男と何楽しくやってんだよ?」


そう言って、俺を指さしながら言う千藤。


「テメェは俺の女だろうが!!!」


そう怒鳴る千藤は、まだ俺とお前の関係は続いているんだぞ? と、言っているようにしか聞こえなかった。

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