第13話 修羅場

「間宮さん」


「ん? どした?」


「そういえばなんですけど、なんで俺までついて行かなきゃ行けないんですか?」


3人にどこかに連れられている中、俺は間宮さんに聞いた。


「一応あんた、龍希の友達なんでしょ? だったら、その情報とファンクラブの情報を合わせればめっちゃいい収穫になるでしょ」


当たり前じゃん、そういった感じで言う間宮さんだが、そうなると、不安要素が1つある。


ファンクラブと情報が被る可能性だ。


龍希とは確かに友達だ。

あっちがどう思っているかは無視すると......だけど。

ただ、友達だからと言って何でもかんでも知ってる訳では無い。


「もし、情報が被ってたら......?」


俺が恐る恐る聞くと、間宮さんは何かやばい感情が秘められてそうな笑顔で━━━━━━


「決まってんじゃん! 冬になったら、海の底にたたき落とすだけだよ〜」


━━━━━━いや、これ冗談に聞こえん。

目が本気だ。


俺が命の危機を感じて歩いていると、どうやら着いたらしく、3人は止まった。


止まった場所は......化学室だ。


「間宮ちゃん、あと......そこの名前分からない人、さぁさぁ入って入って!」


浜野さんがそう言って、古びたドアを開けていく。

一応前にも言ったけど......浜野さんら3人とは1年次の時同じクラスだったからな!!!?


とにかく、なんやかんやで化学室に入る。


「「え」」


「えっ!?」


俺と間宮さんは、化学室にいた意外な人物の存在を同時に認識し、同時に驚きの声を上げた。


そこにいたのはファンクラブの会員と思しき人に囲まれている木滝さんだった。


「違うからね!? 私、八葉矢くんのファンクラブに入ろうとしてる訳じゃないからね!?」


「じゃあなんでいんのよ」


慌てた様子で誤解?を解こうとする木滝さんと、死んだ魚の目をして質問する間宮さん。


木滝さんが少人数ではあるが、複数の女子に囲まれていることを考えると、多分たまたま通りかかった木滝さんが、勧誘目的で化学室に招かれたのだろう。


「説明するから......助けてぇぇぇ」


そう言って右手を伸ばす木滝さん。

その右手を俺と間宮さんで掴んで助け出そうとするが、思ったよりも動かない。

というか、引っ張り負けて俺たちがあっち側に連れていかれているような......


木滝さんの綱引き状態の俺たちを見て、ため息ひとつついた佐藤さんが、俺たちの方へ歩いてくる。


「間宮ちゃん、木滝ちゃんのことはどうでもいいから、一緒に告白プラン、練りましょ?」


そう笑顔で言って、佐藤さんは間宮さんの腕の方に手を伸ばした。


パシン!


乾いた音が、化学室の中に鳴り響く。

佐藤さんの手は、さっきとは違う方向に伸びている。

間宮さんが、佐藤さんの手を叩いたのだ。


「......え?」


困惑するファンクラブメンバー一同。

その隙に、俺は木滝さんを集団の中から抜き出した。


「......どうしたの? 優香ちゃん」


そう聞きながら近づく河野さんだが、間宮さんが何かを喋ろうとしているのを見て、足を止めた。


「確かに私は、龍希について何か聞き出せるかもって思ってここに来た。けど、ちょっと違うじゃん」


「......どうゆうこと?」


「まず第一に、なんで雪が嫌がってんのにそんな引き止めてるの? それってただの悪質業者みたいじゃん」


「いや、それは......」


「もうひとつ、なんでそんなにこっそりお互いのこと妬み合ってる集団にいなきゃいけないの?」


「......っ!」


妬み合っているようには見えないが、俺の横にいる木滝さんは頷いている。

木滝さんは、何となく分かっているのだろう。


「......ねぇなに? せっかく私たちがあんたのこと助けてあげようとしてるのに......!」


「妬み合ってる集団が、私のことを本気で助けようとする訳ないじゃん!」


「は......? それってあんたの勝手な想像でしょ? ていうかあんた、私たちのこと敵に回そうとしてる自覚ある訳?」


「知らないよ、そんなの。行こ、雪、真波」


そう言って修羅場から出ていく間宮さん。


俺と木滝さんは、その後について行のだった。

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