第14話 ピアノの音色は不安を呼ぶ

その日の放課後、俺と木滝さんは音楽室で文化祭のための練習をしていた。


弾き続けて少し経っているが、最初の時と比べるとだいぶ良くなっているのが、ピアノ素人の俺でも分かる。


終盤の方に入る━━━━━━━かと思ったが、木滝さんはキリがいいところでピアノを弾いていた手を止めた。


いきなり演奏を止めたので、どうしたのかを木滝さんに聞こうと思った時、木滝さん、俺の方に体を向けて、心配そうな顔で話してきた。


「真波くん、今日の昼のことなんだけど......」


「それが、どうかした?」


「優香ちゃん、八葉矢くんのファンクラブみたいなのに、喧嘩売っちゃったみたいな感じになってたけど、大丈夫かな?」


「あぁ......どうだろう、ちょっと色々思うところあるしなぁ......」


「例えばどんな?」


そう聞く木滝さんに、俺は少し長くなってしまうことを言って話し始めた。


「まず、俺と間宮さんを誘ってきた3人組なんだけど......」


「一緒に入ってきた人達?」


「そう。その3人は、俺と元同じクラスの人だったんだけど、真面目だった人達なのになんで強引な感じな人になったんだろう」


それが1つ目の思ったこと。

そしてもうひとつある。


「もう1つ、龍希はファンクラブの存在を知ってるのかなって」


それが2つ目の思ったこと。

龍希の性格上、ファンクラブという存在で生まれる感情は嬉しい@皆無、鬱陶しい:100パーセントとしか思わないだろう。


そして、見た感じではあるが、龍希の言ったことなら何でも従ってしまいそうな空気はあった。


もし、龍希がファンクラブの存在を知っているなら、あいつは「やめてくれん?」とか「勝手になにやってんの?」などなど、そんなことを言っててもおかしくはない。


そう言われたらファンクラブは━━━━━━


「確かに、八葉矢くんにそう言われたら、八葉矢くんのファンクラブは解散してそう」


「だから多分、龍希はファンクラブの存在知らないんだと思う」


「なるほどなるほど......」


頷く木滝さん。


しばらく頷いていた木滝さんは、俺の顔を見て真剣な顔で言った。


「つまり、どゆこと?」


......oh......

言いたいことが全く伝わってなかった。


「つまり、間宮さんとファンクラブの喧嘩が勃発したら━━━━━━」


そう俺が言っている最中だった。


いきなり勢いよく音楽室のドアが開いた。


俺と木滝さんがドアの方を向く。

ドアの先にいた人は......


「え? 誰もいない......?」


開いたドアの先には誰もおらず、ただ長い廊下が見えるだけ。


「......イタズラかもね」


木滝さんの言う通り、イタズラだとは思うが、そのイタズラが、後にちょっとした騒動になるとは、この時の俺たちは知らないのだった。

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