第15話 小さな冷戦1

昨日の音楽室のドア突然開く事件は、未解決のまま水曜日になった。


今日やらなければいけないことは2つ。


1つ目は、龍希にファンクラブの存在を知っているかどうかを聞くこと。

2つ目は、場合によってにはなるが、河野さん、浜野さん、佐藤さんがどうしてあんな感じになってしまったのかを探ること。


正直2つ目に関しては、やってもやらなくても別にいいのだが......


寝間着から制服に着替え、今日の授業に必要なものをカバンに押し込み終えた俺は、朝食を作ろうとしたのだが......


「ピンポーン」


ちょうど家のチャイムが鳴った。


(まだ朝の7:10位だぞ? 誰だ?)


そう思い、カメラ付きインターフォンの画面を見る。


しかし、誰も映っていなかった。


一度確認のために外に出てみるが、何一つ変わった様子はない。


(昨日といい今日といい......なんでこんなに変なことが起きるんだ?)


昨日のことは、正直に言ってしまえばファンクラブの内の誰かがやったとしか思っていなかったが、俺の家を知っているのは龍希と、最近知った木滝さんくらいなはず......


色々と疑問に思いながら、俺は朝食作りを再開したのだった。





「おい龍希、起きろ」


「んあ? なんだ急に? 起こしてくるなんて初めてだな......」


「まぁな、だけど、一応お前に関わる話があってだな」


そう言って、朝早くから自分の机で寝ていた龍希を強引に起こし、俺は昨日のファンクラブについての話をした。


「はぁ? ファンクラブ? なんだそりゃ」


話を最後まで聞いた龍希のリアクションは、俺の思っていた通りのものだった。


「俺もどんなことをしているのかとか、よくわかんないけど、一応伝えようって思ってな。間宮さんとファンクラブの喧嘩が勃発した時に、龍希がなにか言えばその場を収められるだろうし」


「なるほどなぁ、てか、いつの間にそんなめんどくさそうなのが出来てたのかよ......」


愚痴を言う龍希。


その気持ちは何となく分かる、けどな? ファンクラブ出来るってどんだけ女子キラーなの?


嫉妬9.8割、同情0.2割の視線を龍希に向けている俺に、寝るという事を言い、寝始めた龍希。


一応聞きたいことは聞けたので、俺も席に戻り、10分と少しの間ではあるが寝ようと思い、寝る体勢に入ろうとした時━━━━━━━


「真波くん、ちょっと話があるんだけど......」


と、後ろから聞き覚えのある声で話しかけられた。


振り返るとそこには、いつもとは違って黒く、長い髪に、赤いヘアピンを2つつけた木滝さんがいた。


少しメイクでもしているのか、以前とはちょっと違う気がする顔を、無意識の内にじっと見つめていた。


「ちょっと......見すぎだよ......」


そう恥ずかしがりながら言う木滝さんの声で、俺は我に返った。


「ああ......えっと、ごめん。それで、話って一体......?」


「ああ、うん。でもちょっとここだと話しづらいから、少し移動しよ?」


そう言って、教室から出ていく木滝さんの後に、俺はついて行った。





「ここなら大丈夫かな」


そう言って木滝さんは、誰も通らなさそうな倉庫室の前で止まった。


「それで木滝さん。話っていうのは......?」


「これをちょっと見て欲しいんだ」


そう言って、木滝さんは制服のポケットに入れていた紙を俺に見せた。


「......これって......?」


「多分、そういうことだと思う」


木滝さんが差し出してきた手紙の内容、少し悪い表現があるので全て言えはしないが、簡単に言えば、「私たちを敵に回したことを後悔させてやる」という内容。


送ってきた人の名前は書いていない。

しかし、こんなに敵意を感じる文章を送り付けてくる人......いや、団体なら、心当たりがある。


俺と木滝さんは、今日の昼休みにまた、あの団体がいる場所へ行くことにした。

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