第23話 写真
一通り必要そうな荷物を、少し大きいバッグの中に詰め込み終えた俺は、いつ帰ってくるか分からないので、家の戸締りの確認をしていた。
「ここの部屋も......オッケー! これでもう全部の部屋の鍵は掛かってるだろ」
鍵が閉まってることを確認した俺は、先程入った部屋を見渡してみる。
入った記憶はないけど、最後にここの部屋に入ったのはいつだろうか......
この部屋は確か両親の寝室であり、たまに仕事をする場所として使われていたはずだ。
こっそり入ってイタズラしたこともあって叱られたことがあったと聞かされたことがあった気がする......
両親......両親か......
「......いや、何一人で落ち込んでんだよ」
両の頬を軽く叩き、部屋を出ようとするとある物が視界に入った。
ベッドの隣の小さな物置の上、ライトのすぐ横に置いてある写真立て。
いつからかは分からないが、倒れている。
写真立てがこの部屋にあるということは、両親についての写真だということはわかる。
気になるが、写真立てについてはまた後で立て直せばいいだろう。
今は、学校で待っているはずの木滝さんの元にすぐにでも行くべきだ。
写真がどんなものなのか、それに関しては全く分からない。
見れば多分、また両親を思い出して一人落ち込むだろう。
だから見ない。
わかってる。
今じゃない。
しかし、脳で分かっていたとしても、俺の体は言うことを聞かなかった。
付いていたホコリを払って、ゆっくりと写真立てを立てていく。
「これは......」
今でもはっきり覚えている写真だった。
中学の入学式の時......つまり、事故の数ヶ月前の写真だ。
当時の俺の肩に手を添える両親、そして、無邪気な笑顔でピースをしている俺。
当時の俺は、この幸せがずっと続くのだろうと思っているはずだ。
でも、現実はそんなに甘くはなかった......
それが、今だ。
しばらく無言で、その写真を......当時の俺をじっと見ていた俺は、見つけた時よりも少し湿ってしまった写真立てを、伏せた状態で元の位置に戻した。
そして、部屋のドアを閉めた。
そして、そのまま家から出た俺は、少し雲がかかった暗い空の中、学校まで何も考えることなく走っていった。
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