第24話 これから

「あ! 真波くん! 遅いよもう!!!」


流石に少し長く待たせすぎてしまったか。


「ごめんごめん、ちょっと荷造りに時間かかっちゃって」


たった一枚の昔の写真を見てたら、いつの間にかこんなにも時間がかかっていた━━━━━━━なんて、言えるわけが無い。


「もう......まぁいっか。それより、早く行こ行こ」


そう言って歩き始める木滝さんのあとを俺はついて行く。


「木滝さん、親がいないって言ってたけど......どうかしたの?」


あの部屋で両親のことを思い出してしまったからか、俺は多分聞いちゃいけないことだろうということは分かっていても、聞きたくなって聞いてしまった。


「え〜っと......まぁ、色々あってね」


そう言って木滝さんは苦笑いをして、俺の方を向いた。


「真波くんもいないんでしょ?」


「そうだけど、それって一体どこから......?」


「八葉矢くん」


「......ですよねぇ〜」


(あいつ......余計なことばかり話やがって......)


「親のこと、真波くんはどう思っているの?」


木滝さんは、俺の方を向きながらそう聞いてきた。


「......後悔してる」


「それは......なんで?」


「もし俺が、あの時反抗期の真っ只中じゃなければ、もしかしたら両親は生きていたかもしれない。もし俺が、もっと別の人生を歩んでいたら......父さんや母さんは、まだここにいたかもしれない......」


「そっか......まぁ、私のそういう感じだよ」


「......え?」


「そういうことだから! これで暗い話は終わり! さっさと私の家に行くよ!」


さっきよりも早く歩き始めた木滝さんは、あの時......昼休みにピアノの音色を聞いていた時のような......あの感じがした。





「ここが、私の家です」


そう言って木滝さんが指さした先にあったのは、少し大きめのアパートだった。


「ここのアパート、私のおじいちゃんが持ってるところで、家賃なしで生活は出来てるんだ」


そう言って、階段を上がっていく。


「木滝さんは、元々ここに住んでたの?」


「いいや、家族とは一軒家で住んでたけど、流石に管理は無理かなってことで、今は多分他の人がなんかやってるんじゃないかな?」


そう言って、部屋の扉の前まで行き、ドアの扉を開けた。


「ほら、上がって上がって」


「それじゃあ......失礼します」


そう言って上がった先にあったのは、アパートの外見からは想像できないほど広いと感じた部屋やリビングだった。


俺が部屋を見渡していると、木滝さんが俺の目の前まで来た。


「すごい部屋だね。広いし、部屋も結構あるし」


「ふふ、いいでしょ? そして真波くん、心して聞きたまえ」


「え? ああ、はい、なんでしょう?」


「まずは......お風呂にする? ご飯にする? それとも......?」


わかってる、この人は俺をからかっている。

その証拠に、めちゃくちゃニヤニヤしてるし。


......なんか、この先こんなノリが続くと思うと思うと、俺が生きて我が家へ帰れるかどうか、不安に思えてきた。

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