第35話 私と千藤

「付き合う」ことがどういうことなのか、あまり分からないまま、裕也と付き合って2ヶ月の月日が経った。


確かに、裕也とはあれ以来、遊ぶことも多くはなった。

けど今は━━━━━━━


「ねぇ裕也、今度こそ遊びに行こうよ。行きたいところがあるんだけどさ」


私は、何となく今回も断られるんだろうな、と思いながら聞いてみた。


「あー、わり! 今日は家の用事とかがあってさ、また今度行こうぜ」


そう言って、両手を合わせて軽く謝罪をする裕也に、私は「また今度ね」と言って、教室から出ていった。





その日、裕也に断られたということと、ただただ暇だったということもあって、私は学校から少し遠いショッピングモールに来ていた。


いい思い出もあれば、嫌な思い出もあるそのショッピングモールで、何かいい服は無いかなど、少し店をフラフラしていたのだが、聞き覚えのある声が2つ、近くで聞こえたのだ。


会話の内容はよく聞こえない。


あけど、男女であることはわかる。

そして、その男性の方の声は━━━━━━━


「━━━━━━━ここ! ここに行きたかったんだぁ」


女性の声が、この店の隣の近くで聞こえた。

おそらく、最近できたカフェのことを言っているのだと思う。


「ここかぁ、俺も行きたかったんだよね」


(ああ、やっぱりあいつだ)


「じゃあ行こ! ━━━━━━━━千藤!」


やはりそうだった。

男の声の主、それは私の彼氏、千藤だったのだ。


店に入ったのだろうか、会話が聞こえなくなったあと、私は複雑な気持ちで家に帰った。





「昨日のあれ、なんだったの?」


翌日、誰もいない放課後の教室で千藤に聞いた。


このことをクラスの全員がいるところでしても良かったのだが、私なりの優しさで、そうしなかった。

ただ、千藤の返答はそんな気遣いも、一瞬で「しなければ良かった」という後悔してしまうようなものだった。


「いやぁ、バレたならいいや。お前、用済みだから」


「は? それってどういう意味?」


私が困惑しながらそう聞くと、千藤は呆れた様子で私のことを見た。


「だからぁ、用済み。もういらないの」


「それって━━━━━━━」


「うん、もう別れよ?」


そう言って、千藤は席から立ち上がり、誰もいない教室に私を一人残して、教室から去っていった。


「......自分から言っておいて......」


置いていかれた私は、昨日のような複雑な気持ちで、そう呟いた。

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