第34話 化学室の決戦2
「テメェは俺の女だろうが!!!」
千藤の怒鳴り声が、化学室全体に響き渡る。
しかし、木滝さんはその怒鳴り声に怯むんだ様子はない。
「質問を変える。今まで私と真波くんに何かしたこと、あるでしょ?」
「......ったく、ブレねぇな」
舌打ちをして、そう言ったあと、千藤は顔を化学室の天井に向け、何かを思い出すように口を開き始めた。
「お前らが敬老の日、会っているところを見た。そん時に━━━━━━━━━」
「いや、ちょっと待て待て待て」
話の序盤ではあるが、『敬老の日』というワードを聞いて、俺は千藤の発言を止めた。
「敬老の日に会ったところを見たって、どうやってだ? 敬老の日は、俺の家で ━━━━━━━━あ」
自らの失言に気づいた時、既に遅し。
窓際から視線を感じる。
1つ、2つ、3つ。
視線を感じる方を向くと、そこには河野さん達が俺と木滝さんを交互に見て、何かヒソヒソと話している。
敬老の日、木滝さんが俺の家にいたことは、誰にも話していない。
もちろん、その前のことも。
しかし、俺は今、「木滝さんが俺の家にいた」ということを知られてしまうような発言を最後まで言いはしなかったが、してしまった。
つまり━━━━━━━━
「「「雪ちゃんと真波って、付き合ってたの!!!?」」」
うんうん、知ってた、この展開。
「付き合ってねぇぇぇぇぇえ!!!」
今度は俺の怒鳴り声が、化学室全体に響き渡った。
□
「もうこれでいいだろ」
そう言って俺は、河野さん、佐藤さん、浜野さんを化学室から追い出し、扉を閉めた。
もちろんこれが、だいぶ酷いことをしているということはわかっている。
だけどすまん、話が全く進まなさそうだから追い出させてもらう。
「さっきの続きだ。敬老の日に俺と木滝さんが会っているところを見たってことは、俺の家も知っていることになる。どうして会ったこともない俺の家なんか知っていたんだ?」
3人を追い出したあと、先程までいた位置に戻り、千藤に向かって質問する。
まぁ、千藤の返答の予想はついているのだが。
「雪の後を追った」
「それで、俺の家にピンポンダッシュをしたのは、木滝さんを追って、その時に俺の家の場所を知った千藤がやった......で、いい?」
「ああ、そうだよ俺だよ」
「なら、音楽室まで忍び込んで、ドアを思いっきり開けたのも?」
「うるせぇな、俺だよ、俺。雪の後を追ってお前の家を知って、雪とテメェが会ってるとこ見てムカついて、ピンポンダッシュして、雪の名前が書いてあるロッカーに手紙入れたりした!!! これでいいか!?」
千藤は、早口で自分がやったことを自白したが、反省はしていないのがよく分かる口ぶりだった。
「確かに、少しはやりすぎたかもな? だけどな、雪が俺を裏切らなければ━━━━━」
「お前はもう用済みだ、だからお前はいらない」
木滝さんが、千藤の話を遮り、まっすぐ千藤の方を向きながら、先程の口調よりも力強く言い放った。
「それは......」
「真波くん、倉庫での話の続き、聞いてくれる?」
木滝さんは、先程の木滝さんの言葉を聞いて、狼狽えた様子の千藤のことをまっすぐと見たまま、俺にそう告げた。
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