第26話 変な感じ

「なんか、今日のお前変じゃね?」


「......は?」


昼休み、向かい合って弁当を食っていると、唐突に龍希がそう言った。


「龍希、なんか無性にイラついたからって、人に向かって『変だな』なんて言っちゃダメだろう?」


「勝手に俺をイラついてると決めつけんな!」


「......そういうことにしておくか」


「いや実際そうだから」


「で? 変って何が?」


ちょっとしたコントのようなことをした後、俺は先程の『なんか変だな』ということに質問した。


当然だが、龍希にも木滝さんの家に泊まっているなんてことは言っていない。

それに、その事が気づかれてしまうようなことも一切していないし、それは今もだ。

なら何が変なのか......?


「海斗の作った弁当、お前にしてはやけに豪華だなと思ってな」


......あ。


「あと、弁当の袋も違うよな......。それに、弁当箱もなんか見たことねぇの使ってるし......いつも使ってたやつ、壊れてなかったろ? あれどうしたんだよ?」


............。


そんなこと、考えたこと無かった。

普段あまり頭を使わない龍希が、ここまで鋭い指摘をしてくるとは思いもしなかった。


「お〜い、実際どうなってんだよ?」


「......あ〜、いや、そのぉ......そうそう! 昨日の帰り道に落としたんだよ!!! それで弁当箱がバッキバキに割れちゃってさぁ! あはは」


何故か徹底的に聞こうとしてくる龍希に、俺は慎重に言葉を選びながら言った。


「でも、それだったら袋まで買わなければ良かったのに」


「......いや、その弁当箱とセットで売ってたんだよ!」


「ふ〜〜〜ん」


何も知らないはずの龍希が、なんでこんなに俺のことを怪しく見ているのだろうかと思ったりはしたが、結局昼休みの鐘の音がなる体感時間が減るだけだった。





本当に、何も無いのだろうか?


昼休みの鐘が鳴り、席に着くために俺から離れていく海斗を見ながら、俺はそう思っていた。


実際、あの弁当がなければ違和感は多分気づけなかったとは思うが、まだ、なにか抱えているのかもしれない。


「ちょっと、ファンクラブみたいになっちまうけど、放課後、海斗を尾行してみるか......」


そう思い、俺はさっさと教材を取り出し、席に着いた。

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