第27話 帰る

周りに気づかれたら何かと面倒なことが起きるから━━━━━━そういう理由で、俺と木滝さんは他の生徒が帰るまで教室にいた。


「問題山積みだなぁ」


「だね。文化祭に、今の生活に、テストに、私と真波くんを付け狙ってる誰についてだったり」


「付け狙ってるって......」


まぁ、俺も確かにピンポンダッシュされたりしてるし、木滝さんも変な手紙を渡されてるから、付け狙ってると言ってもいいのかもしれないけど。


「というか、確かに中間テストってそろそろかも確か15日からだったような......」


土日を挟む形の中間テストなので、2・3日目の科目は何とか出来るかもしれないのだが、2学期の中間なので、範囲は多めではあるはずだ。


それに、テストが終われば即文化祭準備に切り替わる。

1年生の時は、テスト後の放課後の6時まで残された記憶もある。


そう考えると、木滝さんのピアノの練習の時間もかなり削られてしまう。

それもどうにかしなければ。


「中間テスト、どう?」


木滝さんが不安そうな顔で聞いてくる。


「大体ノー勉で70位くらいかな? 悪くても100位行くか行かないかの境目辺りは何とかって感じ」


「ふ〜〜〜ん」


なぜそんなガン見してくる?


「頭いいんだ?」


「いや、どうなんだろう。木滝さんは?」


「......」


「......? 木滝さん?」


「............」


「......あっ」


俺は全て察した。

もうわかっている。

けど、一応念の為に言葉を選んで遠回しに聞いてみた。


「木滝さん、もしかして、勉強教えて欲しいとか言おうとしれません?」


「......教えてくれてもいいんだよ?」


そう言って、俺のことを上目遣いで見てくる木滝さん。

ただでさえ容姿が整っている木滝さんが、上目遣いで見てくるんだ。


俺は「わかりました、やらせて頂きます」と、即答していたのだった。





教室で話した後、そろそろ人も少なくなってきたということで、俺と木滝さんは学校を出ることにした。


「昨日は色々あってピアノ出来なかったけど、今日はやるの?」


「う〜ん......流石にやらないと時間無くなっちゃうもんね」


「あっ、近所迷惑とかにならない? 言い出しておいて言うのもあれだけど」


「ふふ、大丈夫だよ。防音もしっかりしてるし......多分」


最後にちょっと聞き捨てならない言葉が聞こえたんですけど......?


「不安だけど、木滝さんが言うから大丈夫かな。責任擦り付けられるし」


「ひどぉ!!!? そんなことさせないから!!!」


「いてててて!!! 痛い痛い!!!」


そんな会話をしながら、俺と木滝さんは、夕日が沈みかけている空の下を歩いて行った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る