八葉矢くん、尾行する

海斗の様子が少し変━━━━━━━━


昼休みに言った通り、弁当箱がいつもと違うし、弁当の中身もいつもより豪華だった。

そして、海斗本人には言っていないが、目の下にうっすらとクマが出来ていたり、無臭だったあいつがいつもよりもいい匂いがしたりと、一瞬にして人が変わったのではないかと思わせる程の変化だった。


少しの変化ではあるが、これらの理由で俺は尾行を始めることにした━━━━━━━のだが......


「あいつら......いつまで教室で喋ってるんだ?」


俺の視線の先には、教室の中で雑談している海斗と木滝がいる。

内容はあまり聞こえない。

放課後、残ってでもしなければいけない話でもあるのだろうか?

それに、いつ海斗は木滝とあんなに仲良くなったんだ?


ただ、海斗の変化は木滝が関係しているのは間違いないな。


帰ろうか迷いながらしばらく待つと、海斗と木滝は教室を出て行った。


「やっとか」と愚痴を零しながら、俺は2人に気づかれぬようにあとをつけた。





2人が学校の外に出た時、すぐに疑問に思ったことがあった。


海斗が自分の家とは違う方向に歩いているのはなぜか? という疑問だ。


もしかして、海斗と木滝って付き合ってるんじゃ......?


もしそうならば、俺は「友達とその彼女の帰りを尾行するただの変態」になってしまう。


そうなると、周囲からは俺のファンクラブの人達とは、比べ物にならないほどのヤバいやつとして認識されかねない。


俺は何も成果を得られずに、来た道にもどることにした。



「━━━━━んなよ━━━━━」


「ん?」


来た道に戻り、そのまま帰ろうと歩きだそうとした時、すれ違ったフードを深々と被った他校の人がそうつぶやくのが聞こえた。


何かあったのか━━━━━━そう思ったが、知り合いでもない他人に話しかけるのはあまりしたくないし、相手も同様だろうと思ったため、俺は帰るために歩き始めた。

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