第10話 敬老の日1
土曜日、日曜日と続き、月曜日。
俺の風邪は、木滝さんの謎の看病によって治っていた。
2021年、9月20日。
月曜日なので、本来は学校があるのだが、今日は敬老の日。
つまり休みだ。
風邪も治ったことだし、ダラダラ生活をして敬老の日を過ごそうと思ったが、前回に引き続き今回も、その実に素晴らしい計画を木っ端微塵に破壊するイベントが。
今、俺の目の前には、祖父母が座っている。
そして、俺の左隣には木滝さんが座っている。
見たことないほど真剣な顔の祖父、なんかちょっとイラッとくる笑顔で微笑む祖母、ちょっと緊張してそうな木滝さん、何も悪いことはしていないのに顔面蒼白な俺。
......なぜ、こうなっているのか。
それは昨日の9月19日の話になる━━━━━━━
□
「また来たよぉ。おっ、なんか顔色良くなってるね?」
「いや、もうほぼ治ってるんですけど......」
笑顔でそう言う木滝さんに、俺は少しだるさが残っている体を動かし、返事をする。
「木滝さん、もうそろそろ大丈夫なんで、来てくれたのはありがたいけど、お帰りいただいても......?」
「まだ37.1もあるじゃん、ダメだよ」
「いや、平熱36.7だから全然平気なんですけど......」
そう言っても、木滝さんは帰ってくれないのは一昨日や昨日で十分思い知っているので、もう何も言わない。
ソファに腰掛け、テレビのチャンネルを回していると、不意に俺の携帯電話に電話の着信が。
画面を見るが、電話番号しか表記されていない。
......まぁ、その時点で誰だかは何となく分かるのだが。
「もしもし?」
「おお、海斗。元気か?」
本当に既に80超えているのか、そう疑問に思えてしまう程の力強い声が電話越しに聞こえる。
その声の主は、真波 平蔵(まなみ へいぞう)。
俺の祖父だ。
「元気でやってるけど、なにか用がある感じ? 今忙しいんだけど......」
「おお、おお、大丈夫大丈夫。すぐ終わる。明日、お前ん家に洋子と一緒に行くから」
「え? いや急に言われてもな......」
「大丈夫じゃろ? 明日、休みだろ?」
「いやまぁそうだけどさぁ......」
木滝さんの練習やら間宮さんの龍希に告白するための手伝いとかがあったりと、色々本当に忙しいんだけどなぁ......
そう思っていると━━━━━━━
「真波くん、そろそろご飯できるよ?」
......なんて日だ。
なんて最悪なタイミングで木滝さんの声が入ってしまったのだろう。
「お......お前......まさか......」
絶対勘違いしてる。
「女がいるのかぁぁぁぁ!!!?」
知ってた。
うん、知ってたわ。
「違うわ!!!」
「..................来い」
「え?」
「明日、その子も連れて来い。直接見たい」
............人生詰んだ? これ。
ちょっとカオスになりそうな未来が来そうな予感がした。
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