第11話 敬老の日2
そして現在に至る。
一応、いつもはふざけているただのじいさんではあるじいちゃんだが、俺の進路やどこを拠点にするかなど、真剣に考えてくれた人なのだ。
だから、「俺に彼女がいた」という事実を知って、何も言わないはずがない。
............勘違いなんだけども............
「一応聞いておくが......お前らは、どういう関係なんだ?」
真剣な顔で俺と木滝さんを交互に見て、じいちゃんは俺たちに質問を投げかけた。
ここで「ただのクラスメイト」なんて言ったら多分......宇宙の果てまでぶっ飛ばされる。
じいちゃんは、ヒョロがりの部類に入りそうな体をしているが、俺が5歳の頃、目の前でクマをぶっ飛ばしたことがあった。
11年と少しも前......だが、それでも恐ろしいものは恐ろしい。
俺が答えを必死に探っていると━━━━━━
「━━━━━━友達です!!!」
横からの発言。
言うまでもないが、その声の主は木滝さんだ。
木滝さんの即答に近い返答に、じいちゃんは━━━━━━━━
「え? そうなん? まじか、付き合っとると思っとったわい」
......ん??? なんかあっさりしすぎじゃね?
「ふふふ、海斗ったらそんなにビビらなくてもいいのよ? だって平蔵さんったら、海斗の彼女に会って、よろしくって言いに行きたいって言ってただけなんだから」
「......え?」
まさかの祝いに来ただけ。
それだと何故か申し訳ない気持ちになるんだけど......
「洋子、そんなに全部言わなくてもいいだろ? 恥ずかしいだろぉ」
「いやいや、あなたったら、あの時とても面白かったのよ?」
「だからってだなぁ......」
ほんとにこの2人、80代なのか? そう疑問に思いたくなるほど元気よく喋り出す2人。
「木滝さん、なんかごめん。じいちゃんの勘違いのせいで今日もここまで来てもらっちゃって」
「ふふっ、全然大丈夫だよ。真波くんのおじいちゃんのことも、おばあちゃんのことも興味あるし」
そう言って、2人の会話に突っ込んでいく木滝さん。
楽しそうに話し出す木滝さん含む3人の様子を見て、俺は、いつもより楽しそうに話すじいちゃんとばあちゃんを見て、嬉しさを感じていた。
□
「━━━━━━さて、そろそろ帰るか」
そう言って立ち上がったじいちゃんは、ばあちゃんを連れて玄関まで歩き出す。
その2人を追って、俺と木滝さんも玄関へ歩いていった。
「あー! そうじゃそうじゃ、そこの嬢ちゃん、こんなヒョロヒョロで頼りない海斗だけど、これからも学校とか、どっかとか......とにかく、これからも仲良くしてやってくれ」
「もちろんです!!!」
木滝さんの返事に、嬉しそうに頷きながら出ていこうとするじいちゃんとばあちゃん。
だが、その直後、何かに気づいたのかばあちゃんが立ち止まり、こちらに顔を向けた。
「ところであなた、名前はなんて言うの?」
ばあちゃんの問いに、木滝さんは「そういえば」と言い━━━━━━
「木滝雪です。これからも、真波くんと友達でいさせてもらいます!」
━━━━━━━と、自己紹介をした。
「......そうか、じゃあまたな。海斗、雪さん」
先程よりも、元気が無くなったような声で言い、帰って行ったじいちゃんとばあちゃん。
なぜ元気が無くなったのか、疑問に思う中俺は、木滝さんの自己紹介を聞いた時、じいちゃんの横で一緒に家を出て行ったばあちゃんの眉が、少しぴくりと動くのを、見逃しはしなかった。
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