第31話 体育館倉庫にて

英語、古典、現代文などなど。

今日の授業を終え、そのまま帰る━━━━━━━━のが、いつもなのだが、今日は朝のギリ遅刻判定の罰をこなさなければならなかった。


「体育館の倉庫、最近遅刻してる人少ないらしいからだいぶ汚くなってるらしいよ」


「......マジ?」


どこで仕入れた情報なのか分からないが、木滝さんがそう言う。


体育館の倉庫は、通常の清掃では手をつけないところで、主に遅刻した生徒が掃除をするところだ。

どのくらい遅刻してる人がいなかったかによっては、だいぶ手間がかかりそうだ。


まぁ、掃除もやるが、今は━━━━━━━


「木滝さん」


「ん? どうしたの?」


「いや、千藤っていう人についての話なんだけど......」


「ああ、アイツ......」


何か嫌なことを思い出したように、顔を強ばらせる木滝さん。

それを見るだけで、だいぶ嫌な記憶があるということがわかる。


「聞こうか迷ったんだけど、何があったのか、一応聞いてみようかなって思って......」


木滝さんは、しばらく歩きながら俯いた後、ため息をついた。


「わかった。だけど、掃除中にでもいいよね? 全然いい話じゃないし」


俺は「わかった」と言い、木滝さんと一緒に体育館倉庫まで歩いていった。





担任から預かった体育館倉庫の鍵を使い、「キィィィィ」という音を立てながら、思ったよりも重く、古びた扉を開けた。


「うわ、意外と汚い」


ほこりの量から見て、だいぶ掃除されていなかったことが分かる。


「体育館部活の人たちって、ここの掃除しないのかな?」


「どうなんだろう、こんなでも放置されてるし......」


ブツブツ何かを言っていても仕方ないので、俺たちはホウキや雑巾を清掃ロッカーの中から取り出し、掃除を始めた。


しばらくの間、俺と木滝さんは黙々と掃除をしていた。


もちろん掃除なので、黙々と掃除をするのが当たり前なのだが、千藤くんと木滝さんの関係についての話を聞くために、俺は木滝さんに話しかけた。


「木滝さん、さっきの話のことなんだけど.....」


そう言うと、木滝さんが先程のような少し嫌そうな顔になった。


「和也の事だよね」


そう言って、木滝さんは深めに呼吸をして、ゆっくりと語り始めた━━━━━━

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