第18話 あっけない終わり
突如開かれた化学室のドアから現れた龍希。
死んだ目をして突っ立っている木滝さんをちらりと見て、俺の方を見て、そして、今まで喧嘩していた女子生徒たちの方を見る。
「......どんな状況なん、これ?」
龍希は呆れながらそう言い、化学室から出ていった。
なにかガツンと言って、このカオスな状況をどうにかしてくれるのかと思いきや、ただ軽い一言を言い放ったあと、そのまま帰ってしまう。
「いやふざけんなよ!?」
俺が龍希を連れ戻すため、化学室を出ようとした時━━━━━━━
「「「「「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」」」
さっきまで2つに別れて対立していたはずのファンクラブの女子生徒達が、急に悲鳴に近い叫び声をあげる。
「今のやばくなかった!!!?」
「マジかっこいいんですけど!!!」
「一言言って出ていくあのクールさ......死ぬ!!!」
完全に俺たちのことを忘れてる。
ファンクラブの人同士で、龍希のいい事や事実、事実がめちゃくちゃねじ曲がっている話を、さっきの取っ組み合いと同じくらい......いや、それ以上の声量や熱気で話し始めている。
何故かまだ硬直している木滝さんに何か言っても仕方ないので、隣にいる間宮さんに、この状況でどうするかどうかを聞こうとしたのだが。
「あれ?」
隣にいたはずの間宮さんがいない。
間宮さんの近くにいたファンクラブの人たちもいなくなっている。
化学室全体を見回して見ると━━━━━━━
「優香ちゃん、あれやばくなかった!!!?」
「やばすぎて心臓飛び出る!!! あんなん無理だって!!!」
「ほんとそれ!!!」
(......仲直りしてるんだけど......)
自分自身の下駄箱に喧嘩を売っているような紙が入っていたことに怒って来たはずの間宮さんと、間宮さんの話によると、化学室に入ってきた間宮さんにすぐに喧嘩を売ってきたはずの河野さんが、意気投合したかのようにずっと大声で話している。
龍希は、こうなることを知っててあんな行動に出たんじゃ......そう思わせるほどの収まり具合だ。
......俺からすれば、「解決した!」とは全く言えないと思うのだが、おそらく俺と同じ考えの人がこの教室の中に1人いる。
「............」
この化学室に入ってほぼずっと放心状態が続いている木滝さんだ。
試しに近づいて、目の前で手を振ってみるが......無反応。
話しかけても無反応だ。
それだけ化学室に来た時のカオスさにショックを受けたのか......それとも、言い負かすための環境が整っていなかったからなのか......
それはいつか聞き出すとしよう。
昨日の音楽室の扉の件や、俺の家のインターフォン事件については後日聞くことにして俺は、ファンクラブと意気投合した間宮さんを置いて、木滝さんを押して動かしながら教室に戻って行った。
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