私のトラウマ

私は、鍵盤に両手を置いた。


同じクラスの男の子は、今にも演奏を始めそうな私をじっと見ている。


私は、幼い頃に何度も何度も引き続けた曲を、現役の時と同じように弾くことを意識しながら弾き始めた。


室内に響き渡る、ピアノの音色が心地よい。


少し怖さもあるけれど、ピアノを弾くのが楽しい。


ずっと、このまま弾いていたい。


そう......しばらくは思っていた。


ただ、その気持ちは、私を見るひとつの視線によって、一瞬にして砕かれた。


何も害はない。


何も害はない、気にしなくていい。


何も害はない、気にしなくていい......気にしないで......!


そうやって自分に言い聞かせる。


だが、ダメだった。


気づくと上手く動いていた両手は左右どちらも止まっていた。


心配そうにこちらに駆け寄る彼。


だけど、今の私は恐怖で頭がいっぱいだった。

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