第四章 挑戦!戦士たち
四の一
「それで」
と
「進捗はどうだ」
「はい」と巴は答える。「赤と緑のアルマクリスタルには、すでに充分なアルマエネルギーが蓄積されています」
「それで」
「あとは、これまでどおり、藤林あぐりたちの監視を続けます」
「ふふふ」
「は?」
「なに、妹の、あまりの気の回らなさに笑っただけさ」
「…………」
「赤と緑のクリスタルの準備が整った以上、あとは残りのクリスタルを手に入れるだけではないか」
「それはそうですが」
「なにかためらう理由でもあるのか?」
「いえ、まったく」
「ならば、行動あるのみだな」
「わけを教えてください」
「なんのかな?」
「五つのアルマクリスタルを手に入れて、お兄様がなさろうとしていることを」
「お前に話すことで、状況が進展する材料になるのか?」
「少なくとも、我我は納得して任務にあたることができます」
「必要あるのかな?」
「この会社の永遠の存続のために、不死の能力が欲しいのですか?」
「私が肯定することで、お前が納得できるのなら、そうだと言っておこう」
巴は、机の向こうにいる兄の、銀色をした長い髪の、白い肌に刃物のような鋭い目と尖った鼻と薄い唇をもつ顔を、じっと見つめた。
「可能な限り早急にアルマクリスタルを入手してまいります」
期待しているとも、がんばれとも兄は言わない。
ただ、わずかにうなずいて、道風は目を閉じた。
巴はCEO室を出て、秘書室を通り抜け、廊下へと足を踏み出す。
そこに、手持ちぶさたそうに待っていた
「で、どうだった」智徳が訊く。
「どうだったもなにも、アルマクリスタルを手に入れろと命令されただけよ」
「穏健派の筆頭だった人が、CEOの座に就いたとたんに急進派に早変わり。ついていけんのは俺だけか?」
「あの人は、昔から何を考えているのかわからない人だったけど、最近はもう機械のように無機質で、妹の私でも思考回路を解析できないわ」
「嫌いだと言っているように聞こえるな」
「少なくとも、好きだったことは、生まれてこのかた一瞬たりともない」
「じゃ、この任務やめるか?」
「やめてしまいましょう、と言えないのが会社員のつらいところね。決行は明日」
「ずいぶん性急だな」ずっと黙ったままだった泉水がつぶやいた。
「嫌なことは、さっさと終わらせちゃいましょう。もう修学旅行の準備もはじめなくちゃいけないしね」
「おいおい、教師の仕事は出向あつかいじゃないのか。骨の髄まで教師生活に染まってるな」智徳があきれる。
「修学旅行を前にして、生徒達を奈落の底に突き落とすんだから、教師としては、失格でしょうね」
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