第31話: いざ、星雲荘へ ~隆太郎~

「では、段取りを確認する」


 創一郎が、ホワイトボードに向かってスラスラと文字を書いていく。


「まず、俺と、子供たち四人で中へ入る。

 その途中、もしもチャコフ星人を見つけたら、香穂、すぐに教えてくれ。

 それを聞いたら、柏木、桜坂、梅津ほか外星人臨時対策本部のメンバーはそのチャコフ星人を抑えてくれ。

 なるべく穏便にな」


 その言葉を聞いた大人たちの顔が一気に引き締まった。

 それを見た創一郎は、それを納得したと取ったようで、そのまま話を続ける。


「もし中に入るまでにチャコフ星人が見つからないのであれば、それは星雲荘の中にいる可能性も出てくる。

 その場合はメンバーを半分に分ける。

 その時の割り方は先ほど伝えた通りだ。

 それと、抑えたチャコフ星人はこの場所へと連れてくること。

 ここへ連れてきたものは、再び星雲荘へは向かわないこと。

 せっかく連れてきたチャコフ星人に逃げられてしまう可能性が高くなる。

 面倒ごとを減らすために、一人のチャコフ星人に対し必ず一人以上は監視すること」


 厳重すぎる警備と言われるかもしれないが、敵がどれだけの力を持っているのかわからない以上、警戒することを欠かしてはいけない。


「次に、星雲荘の中へ入った後の行動についてだ。

 中へ入り次第、フォクシーというリーダー格の男の身柄を確保する。

 そこから、交渉を始めよう」


 これが、今回の作戦だ。

 この作戦には、唯一チャコフ星人の顔を知っている香穂が重要になってくる。

 一応、香穂の話から、似顔絵を描いてもらったらしいが、その絵の顔がすぐに見つかるとも考えにくい。

 大人たちはその絵を食い入るように見ていたから、怪しい人がいたのなら、その人物を注意して見る程度のことはできるだろう。

 香穂からチャコフ星人だと言われた時には、準備ができているはずなので、他の仲間に気づかれることなく捕らえることができる。


「よし、早速作戦を開始しよう」


 ここまで、香穂と再開してから八時間ほどが経過していた。

 これは香穂や僕たちが想像していたよりもずっと早い時間だった。

 てっきり一週間ほど会議の時間を取るものと思っていたので、待っていて欲しいと言われた時は驚いた。

 けどその結果、こうやって早くに行動に移すことができた。

 創一郎には感謝しかない。


 僕たちは、周りを気にしながら、星雲荘へと向かっていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る