第9話: 学校案内 ~1階~ ~隆太郎~

 4階の図書室を出た後、3階、2階を順番に説明していき、今、1階の職員室の前に僕たち4人はいた。

 今まで説明してきた場所は、授業などでよく使う場所ばかりだったので、普段行かない職員室に緊張していた。


「失礼します、1年2組の菅原龍太郎です。

 朧木先生にお話があってきました」


 僕の声に続くように、理恵子、健太、最後に香穂が順に名前を言って、職員室に入ってきた。


 朧木先生は、大人数で自分のもとに来たことに驚いた顔をしていたが、香穂の顔を見ると納得したように、


「君たち3人でこの学校を回って説明してくれたのか。ありがとうな」


 健太はこの言葉で満足したらしい。

 帰ろうとしたので、理恵子が首根っこを掴んで止めていた。


「それで、ここにきたってことは、私に言いたいことがあるのかな?」


 朧木先生は、香穂に尋ねると言うよりかは、僕に向かって話しているように見えた。


「先生。先程まで、リエたち3人にこの学校を案内してもらっていたのですが、その中で、図書委員に興味を持ちました。

 ひいては、私を図書委員に入れてもらえませんか?」


 僕の代わりに、香穂がこの質問に答えた。朧木先生は、香穂の方へ向き直すと、


「別に構わないが、どうして図書委員に入りたいんだ?

 こちらとしても、その真意は知っておきたいのでね」


「ありがとうございます。

 そうですね、真意ですか……」


 香穂は、少し悩んだ顔を見せた後、


「まず一つ目、私が話しかけやすいと思って話したリュウタがいること。

 そして二つ目、本が好きだから。

 多い時だと、一日に十冊は読んでいた。

 最後に三つ目、自分が好きな本を紹介できる可能性があったから。以上」


 まるで口調が朝に戻ったみたいだった。

 よほど緊張していたのだろう。

 先程まで表に出していた感情がなくなり、少し、威圧感を放っていた。


 朧木先生は、そんな彼女に耐えられなくなったのか、


「わ、わかったよ。

 じゃ、名簿に追加して置くから、これからよろしくね。

 香穂さん」


 若干強引な気がしなくもないが、結果オーライと言うことにしておこう。


 こうして、僕たちは図書委員として、学校生活を共に過ごすことになるのだった。

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