第20話: 香穂の正体 : ~香穂~

「私は、ここ地球の住民ではないの。

 多分今あなたたちが一番恨んでいるもの。

 それが私なの」


 香穂は静かにつぶやいた。

 それに対する四人の反応はさまざまだったが、誰もが、その意味を咄嗟には理解できずにいた。

 ある者は首を傾げ、またある者は腰を抜かし、ある者はじっと香穂を見つめ、ある者は唖然として香穂を見ていた。


「香穂は……いや君は、いったい何者なの?」


 隆太郎が震えた声で問うと、香穂は静かに目を閉じた。


「私、私は、地球ではチャコフ星人と呼ばれる生命体。

 今この地球を奪おうとしている者」


 その言葉を全員が理解した途端、健太が香穂につかみかかった。


「お前が、お前がリエを攫ったやつなのか。

 お前さえいなければ、リュウが苦しむ必要もなかったのか。

 お前さいなければ、お前さえいなければ……」


 その言葉に一番初めに反応したのは、社だった。


「ちょっと待ってくれ。

 というか、まず香穂を離してやってくれ。

 今の短期間に対する情報量が多すぎる。

 まず、香穂がチャコフで、理恵子が攫われた?

 それがどうして隆太郎が苦しむことにつながるんだ?」


 社は訳がわからないという風に首を傾げた。

 これに答えたのは、理恵子だった。


「それは、まずチャコフ星人が私を攫って、リュウくんに私か地球かどちらかを選ばせたの。

 それで、リュウは、私を選んだの。

 その結果、数日後にテレビでチャコフ星人が現れて、地球人を絶滅させることを宣言したわ」


 それに、と隆太郎が続ける。


「言ってしまえばチャコフ星人のせいで僕は肩身狭い思いをしていたことになる。

 地球よりもリエを選んだということを周りの人に知られてしまえば、僕だけでなく、リエまで攻められることになるかもしれない。

 そう思うと、辛かったんだ」


 社は、そんなことが自分の知らないところで、かつ自分の身近なところで、そんな悩みを抱えている人を見かけても、何も気づくことができなかった自分を責めた。


「これはここにいる社以外の人にしか話していないから、気づいてなくても当然だけどね」


 健太が軽い口調で言う。

 その言葉に、隆太郎と理恵子は頷く。

 香穂は身じろぎ一つしない。


「あなたたちは気楽そうでいいわね。

 いずれ殺される運命には変わりないのに。 そこだけは尊敬してあげるわ。

 けどね、未来は変えられない。

 過去も当然変えられない。そのことはわかってよね」


 香穂は怒っているようだった。


「未来が変えられたら…どんなに良かったことか…。

 こんな星に来なくても済んだ…家があった…私の家族………」


 理恵子はこんな時でも、香穂に寄り添った。

 いつの間にか、香穂は泣いていて、何かを怖がっているようだった。

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