第24話: 突然の電話 ~沙織~

「柏木さん。お電話です」


 そう言って、仮眠中だった柏木を起こしたのは、梅津だった。


「なんだよ、今寝てたってのに……」


 多少うんざりしながら電話に出ると、チャコフ星人と関わりがある、龍太郎からだった。


「柏木さん!! お願いがあります。

 香穂を…イヴェルを…探してくれませんか?」


 イヴェル? イヴェルってなんだ?

 今香穂って言ってたか?

 香穂ちゃんって途中で退席して行った子だよね、まだ見つかってないのかな。


「とりあえずイヴェルが何かは置いておいて、香穂ちゃんってあのあと一回も見つかってないの?

 ほら、途中で走って行っちゃった子だよね」


 色々な過程をすっ飛ばしてしまったことに気づいたのか、龍太郎は謝ってきた。


「焦ってしまいすみません。順を追って説明します」


 柏木は、隆太郎の目の前で起こった話を聞いた。

 香穂はチャコフ星人だということ。

 そして、香穂は僕たちを憎らしく思っていること。

 チャコフ星人は数年前からいること。

 そして、チャコフ星人が人間に変身した姿は一つではないということなど。


「それでは、香穂ちゃんを見つけるのは難しんじゃないかな?

 他の姿になっていたら、もし隣を通りかかったとしても、わからないだろう?」


 香穂と呼ばれるチャコフ星人がどのような姿を持っているかが分かれば、探しようがあるのだが、それがないと、見つかる可能性は極めて少なくなる。


「その点については、大丈夫かと思います。

 香穂がこの地球に来たのはリエをさらう数日前です。

 香穂の話では、あの姿しか持っていないでしょう」


「なるほど、なら探し出せる可能性が高まったね。

 じゃあ、こっちでも探してみるよ」


 電話の向こうで、隆太郎の顔が明るくなったのを、感じた。


「ありがとうございます。

 僕も僕なりに探してみるので、何か分かったら、またこの電話にかけてもらえればと。

 多分リエかケンちゃんが出てくれます」


 一方的に電話が切られる。

 残された柏木創一郎は、静かに仮眠室を出た。


「まさかこんな近いところにいたなんてね。

 もしかしたら、こっちにもいたりするのかな?」


 仕事仲間を疑いたくなさに考えないようにして、作業に取り掛かった。


 途中からは桜坂と共に探しはじめたが、一時間探していても、一向に身つかる気配がなかった。


「全然見つかりませんね。香穂ちゃん。

 あの時の言葉って妙に現実味あったのは、こういうことだったのかなぁ」


 桜坂沙織は、隣にいる柏木に聞こえるかどうかわからない声で、ポツリと呟いた。

 香穂という少女がチャコフ星人だということは、柏木の作業を手伝う段階で聞いていた。

 以外ではあったものの、なぜか納得していた自分がいた。

 それはなぜなのだろうと考えているときに、あの発言が思い出されたのだった。


「私だったらその人を殺す…か。

 本当に望んでいるのかな、そんなこと…」


 私がみている限り、そんな暴力的に解決させることを望むとは思えなかった。

 私が思いたくなかっただけかもしれないが、香穂というチャコフ星人が地球を滅ぼすことは望んでいないように見えた。

 それは、あの子供たちと関わったからだろうか。


 一度しか会っていない人の心情を推し量るには、情報が足りなさすぎる。

 本当のことは本人と直接話し合えばわかると信じ、今は少女を探すことに専念することにした。

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