第28話: 香穂‼︎‼︎ ~隆太郎~
「香穂!!!」
自転車を乗り捨て、一目散に香穂の元へ向かう。
それに続くようにして、健太と理恵子も香穂の元へとついた。
「もう。どこに行ってるのよ。心配したじゃない」
理恵子は今にも泣きそうな顔をして、じっと、香穂を見つめている。
「香穂…。あの日のこと、今でも覚えてるんだぜ。
お前が初めてリュウやリエと仲良くしてくれた日のこと。
それが全部嘘だなんて言わないよな」
健太も、目を赤くしながらも、ずっと、香穂を見ていた。
そこに、遠慮がちな声が聞こえてきた。
「みんな…。なんで…?
私はあなたたちを憎んでいるって…言ったでしょう?」
その声に重ねるかのように、三人の声が一つに重なった。
「あぁ、もちろん聞いたさ。
ただし、それに対する僕の答えはまだだろう?」
「えぇ。もちろん聞いたわ。
けど、私たちの答えをまだ聞いていないでしょう?」
「おう。もちろん聞いてるぜ。
ただ、俺らはまだ答えちゃいねぇ‼︎」
その言葉を聞いた香穂は泣き出してしまった。
「ごめんなさい。ごめんなさい。
もう誰も私の私の味方はいないと思っていた。
リュウタたちとは私から突き飛ばしてしまったし、信頼していたフォクシーにも裏切られた。
私はもう誰も信じてはいけないのかと思ってた。
もう私は生きていてはいけないと思ってた……」
香穂は泣き噦りながらも、必死に言葉を発していた。
「フォークスは、この地球を乗っ取ろうとしてるの。
そのために、今いる地球人が邪魔なだけなのよ。
フォークスを止めない限り、この地球は危ない。
私も地球人たちと一緒に殺すつもりらしいわ。
あの方法を使って…」
その言葉を聞いて、香穂につかみかかったのは、創一郎だった。
「おい、方法って何なんだ! 答えろ‼︎
俺たちに何が起こる? 俺たちはどうすればいいんだ‼︎」
今までずっと黙っていた創一郎の声に、周りにいた柏木のメンバーが怒鳴り始める。
「早く敵のアジトを教えろ」
「やはりチャコフは危険だ」
「お前なんて信用できるか」
「早く自分の星に帰りやがれ‼︎」
泊まることのない罵声に耐えきれなくなった香穂はその場にうずくまり、耳を塞いでいた。
それを見た健太が向こうのメンバーに向かって殴りかかった。
「てめえら…香穂を責めても何も起きねえってことがわからねえのか‼︎
大人がガキ一人に対してなんて言い方しやがる‼︎
ふざけんじゃねぇっ‼︎‼︎」
健太を止める者は一人もいなかった。
いつもなら一人でも求めに行く理恵子もこの時ばかりは、止めなかった。
健太と同じように、この騒がしい大人たちに怒りを覚えていたのかもしれない。
そのうち、大人たちも反撃しようと、拳を振り上げる姿がちらほらと見え始めた。
けれど、健太の手は一向に緩む気配はない。
新しい動きがあったのは、大人たちも健太も、疲れ始めた頃だった。
「もうやめてよ‼︎ これ以上地球人同士で争っていても意味がないのよ‼︎」
香穂の悲鳴のような訴えに、どちらも、動きが止まった。
その隙にと言わんばかりに、理恵子が健太を止め、大人たちも冷静さを取り戻した。
「おいリエ! こいつらまだ殴り足りねえよっ。離せよおい‼︎」
理恵子に
「すまないね。
この人たちも、自分たちの星を守ろうと必死になっていたんだ。
許してやってくれ」
創一郎の言葉に健太は落ち着きを取り戻した。
その言葉に応じるように、大人たちは唸った。
「わかってるよそんなこと…。
けどそれでも俺は許せなかったんだ……」
健太はやりすぎてしまったことに対して負い目を感じているのか、歯切れが悪そうに答えた。
「順番に話していくから。そんなに焦んないでよ……」
香穂がポツリとつぶやいた。
さっきまでの空気とは違い、静かになったその空間では、香穂の声が、はっきりと聞こえた。
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