第38話: 囚われた仲間 ~フォクシー~

 創一郎と言う男が連れてきた部屋には、今行動を共にしている二人、フュースとクラベルを除く全ての仲間が捕えられていた。


「みんな……!!!!!」


 俺の呼びかけに、それぞれがそれぞれの反応をする。


 元気よく答える者、不安げな声を出す者、不平不満をいう者、無言を貫き通す者…。


 地球人たちは、俺の思っていたよりも、捕らえた仲間に対し、温厚な対応をしていた。

 そのことに驚きつつ、俺は尋ねた。


「お前らは仲間を閉じ込めて何をするつもりだったんだ?

 拷問をすると想像していただけあって、意外なのだが」


 その問いかけに意外そうな顔をしたのは、創一郎だった。


「そんなことをして何になると言うのです?

 彼らから何の情報を得ろと?

 それではかえって争いのタネを蒔いていることと変わりませんよね。

 そんな無駄な争いを私たちは望みません。

 それはあなた方も同じはずです」


 それを平然と言い退けるのか、この男は。

 世の中が語っているであろう平和論を、この男は心から信頼し、その考えを尊重しているのか。


 俺は言葉に詰まった。

 監視の目と一定の空間にいるストレスは与えているものの、決して身動きがとれないわけでもなければ、拷問され、耐え難い苦痛を与えられているわけでもない。


 その点においてこの男を信頼しても良いだろう。


「確かにそうだな。無駄なところで仲間を失いたくはない。

 できればこのまま仲間を解放し、我々の意思に従って欲しいのだが、そんな都合よくこの世はできていないのだろう?」


 この状況を楽観視はできない。

 事実、仲間の無事は確認できたとはいえ、捕えられていることには変わりないのだ。

 この事実をどう受け止めるか。この状況の打開策は何なのか。


「そうだな、せっかく捕らえた人質だ。

 こちらが無条件で返すわけがないと言うことは理解してほしい。

 ただし、決して返さないと言うわけでもない。

 ある条件を満たしてくれれば、私たちは彼らを解放すると約束しよう」


 そうと決まれば、答えは一つだ。


「その条件とはなんだ?

 それは俺らがクリアできるような内容なんだろうな?」


 ここでどう足掻いても満たされない条件を出されては、その努力をする意味が薄れてしまう。

 それに、ここにいる仲間たちを救えなくなってしまう。

 それだけは避けなければならない。

 必ず仲間を救うのが俺の責任だ。

 この星に連れてきてしまった俺の責任なのだ。

 俺にはチャコフ星へこいつらを家に帰らせなければいけない義務さえもあるのだろう。


「もちろん、君が我々の意思に従ってくれるなら、君の仲間を解放しよう。

 とはいえ、その条件を出すのは私ではなく、彼女なのだがな」


 そう言って、創一郎はイヴェルを指さした。


「えぇ、そうね。

 流石の私でもあなたたちをここで殺したいと言うわけではないの。

 だから条件を飲んでくれることを望むわ。


 一つ目、宇宙船の確保。

 これは今から学校に同行してくれるはずだからこれはいいでしょう。


 そして二つ目、この星に二度と来ないことを誓いなさい。

 宇宙船であなたたちは私と一緒に故郷であるチャコフ星へと帰還してもらいます。

 その時に、あなたたちにまた地球に来られてしまっては、迷惑がかかります。

 そうならないためにも、この条件を飲んでもらうことが重要となります。


 最後に三つ目、チャコフ星についても、しばらくは私の言うことに従いなさい。

 これは、私が一番許せないこと。

 フォークスをあなたが殺したこと。

 その罪を償ってもらいます。

 あなたのことですから、フォークスはどこか近くにいるのでしょう?

 それも、腐ってしまわないように保存しているはずです。

 もちろん、フォークスをあなたがこの星に置いていくわけがありませんよね。

 ならば、あなたの罪も背負っていくことになるでしょう。

 けれど、向こうへついて、フォークスを隠してしまっては、あなたの中にも、罪悪感と後悔が付きまとうことだと信じています。

 なので、チャコフ星についたら、自主してください。そして罪を償いなさい。

 私からの条件は以上です」


 当然の条件だった。

 決して過剰に負荷をかけすぎることはなく、かといって、簡単すぎるものでもない。

 フォークスのことはいずれその罪を償わねばと常々思っていた。

 その機会を与えてくれたことに感謝したいくらいだ。


「あぁ、その条件を飲もう」

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