僕たちの星 地球
EVI
第1話: 地球の運命を背負った男の子 ~隆太郎~
僕はこの日、ある決断に迫られていた。
とある星の宇宙人が、僕の幼馴染を連れ去り、「地球を渡さないのなら、この女は殺す」と僕に迫ってきたのだった。
僕、
物心ついた時から一緒にいた三人(僕たちともう一人)は、誰一人でも欠けてしまえば、他の二人はなにもできなくなってしまうような、お互いにお互いを大切にしあうことをしてきた。
今、僕の前には理恵子はいない。
もし、地球を守るために、理恵子が犠牲になることを認めてしまった場合、僕はなにもできない、植物人間のように考えることさえもできなくなってしまう。
だからとは言っても、理恵子を守ったとして、地球を宇宙人に取られてしまったら、一緒にいられるかわからない。
散々悩んだ結果、僕は理恵子を選んだ。
これから来るであろう言葉の重さも考えずに……。
♦︎♦︎♦︎♦︎
理恵子が帰ってきて数日が経った頃、僕は理恵子の家で一緒にテレビを見ていた。
その時、急に画面が暗くなったかと思ったら、僕にあの決断をさせた宇宙人が画面に写っていた。
「なんでこいつがここに出で来るんだよ!!」
僕は苛立ちが抑えられず、つい声に出して愚痴ってしまった。
一方の理恵子は
「
と、泣きかけている。
一体どんなことを話すのかと思い始めた頃、画面の宇宙人が突如機械のような声で喋り出した。
『私は、チャコフ星から来た、チャコフ星人である。
先日、この星の一人の少年が、地球をあなたがたチャコフ星人に差し渡す。
という言葉を預かった。
今、我々の星では、星の寿命が尽きかかっており、環境の似た星を求めて、人員が派遣された。
それが私だ。
しかし、我々が住むには、あなた方の存在が邪魔をする。
しばらくこの地球を観察したのだが、どこの場所をみても、同じ星の生物を殺し、痛めつけ、働かせ、集団で一人を攻撃する。
今の状態のまま、わたしたちが移住しても、同じようにいわゆる迫害と呼ばれる行為に悩まされるだろうと判断し、地球人類を排除および、絶滅させることに決定した』
その言葉を聞いた時、僕は深く後悔した。
「僕が
リエを救おうとしたから、地球は侵略されるのか。
こんなの理不尽だろ……
どうしろっていうんだよ……」
次の日、僕らが登校すると、チャコフ星人の話題で盛り上がっていた。
中でも、クラスのリーダー格、
「地球を捨ててあんな訳のわからない宇宙人なんかに地球を渡した少年って馬鹿としか言えないよね。
ほんと、なに考えてんだろ?」
「地球を捨ててまで、欲しいものがあったのかなぁ」
と言っており、僕と理恵子は、深く俯いてしまった。
なるべく目を合わせないようにしながら、席に着いた。すると、健太が、
「リュウ、おはよ。昨日のテレビみたか?
チャイコフ星人だか、ジャコ星人だか知らんが、よくわからん宇宙人とか名乗ってる輩が、地球を奪いにくるってやつ」
知ってるもなにも、自分たちが関わってるのだから、知っていて当然だ。
しかし、あまり多くの人に話してしまうと、その後の圧に押し負けてしまうだろう。
そこで、場所を変えようとだけ言い、屋上まで三人で移動し、そこで、理恵子が連れ去られた話、そこで自分が下した決断など、あったこと全てを打ち明けた。
健太は初めのうちは戸惑っていたが、だんだん内容がわかってくると、星人への怒りを抑えられないようだった。
「人の大切なもの奪っておいて、なにが差し渡すだ。
なにが預かっただ。
そんなもの表だけじゃないか。
リエを連れ去ったことも含めて、俺は全力で抗議する。
あと、これを知ったからには、
健太は、近所では、喧嘩の才に優れており、気に入らないものがあると、すぐに力で抑えようとしてしまうのだ。
それに、いつも止めるのは、僕か、理恵子なのだ。
「ケンちゃん、なるべく穏便に済ませてよね。
ケンちゃんが暴れると、止めるの大変だんだから」
「わかってるって、穏便に一発で仕留めるから」
「「そういう問題じゃないからっ!!」」
「ちぇ…わかってるってば……」
念を押しておいて、僕らは教室に戻った。
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