第11話: そもそもの原因って…? ~沙織~
「そういえば、チャコフ星人が言ってたことってどういうことだったんでしょうか?」
私は、チャコフ星人の発していた言葉を思い出しながら、柚原に尋ねた。
「チャコフ星人は、地球人がこの星を明け渡してくれたと言っていた。
けれど、誰がくれると言ったのかは定かではない。
これって信用性にに欠けると思いません?」
そう。私が今までずっと疑問だったのはそこだった。
本当にチャコフ星人に地球を渡すと言った人物はいるのか。
もしいたとしたら、なぜ渡すと言ったのか、そう言わざるを得ない状況だったのか、結局のところ、それがわからないとチャコフ星人との対話は成立しない気がしていたのだ。
「チャコフ星人…まだ謎でしかないからね…
この前テレビに出てきた姿だって、ダミーの可能性もある。
相手の心理を考えることは、確かに大事かもしれない」
まずは対話をする前に、地球を渡すといった少年に会ってみるのもいいのかもしれない。
「柚原さん、一つお願いがあるのですが…」
そう言って、私は一つの案を出した。
けれど、柚原はその案にあまり乗り気ではないようだった。
「全国的にアンケートを実施して、チャコフ星人と接触した人物を特定する…か。
考えとしては正しいんだけど、本人が自分が関わっているかを言うのか、目立ちたがり屋が自分だと言い張って、余計混乱させるか。
おそらくどちらの線もあり得るだろう。
難しいだろう、というのが正直なところだろうね」
柚原はラーメンを啜りながら言った。
「ですが!! 他に方法があるのですか。
信用できるデータが元々不足している以上、そこに正確性を求めるのは無理というものです」
「しかし、そのアンケートを実施して、余計国民の不安を募らせたらどうするつもりなんだ。
あなたは、国民を不安にさせたいのですか?
人間という種にとって大事な信頼関係というものを断ち切ろうというのかね?」
自分の考えが足りないせいで、人間同士の信頼関係が不安定になるかもしれないなんて、考えもしなかった。
自分の考えの甘さが浮き立って見えるのはあまりいい気分ではない。
恥辱感に苛まれた。
「けれど、誰がそれを許可したのかは、確認して見てもいいかもしれないね。
少なくともその少年は、チャコフ星人と接触してると見て間違い無いだろう」
柚原は、自問自答しているような、ゆっくりとした口調で話した。
「そのためにも、どうやって調べるかは考えないとけないけど……」
「では、まずは柏木さんに相談しないとですね」
そう言って、私たちはラーメン屋を出た。
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