第32話: 香穂は今どこに…? ~フォクシー~

 いない、いない、居無い。どこにもいない…。


 イヴェルが行きそうな場所はあらかた探した。


 理恵子という地球人の家。

 イヴェルに通わせている学校。

 隆太郎や健太の家も探した。


 他にイヴェルがいく場所はどこだ……


「イヴェル…。どこにいるんだよ……」


 普段なら歩いたりはしない場所を永遠と歩くのは、予想以上に疲れる。

 ただし、歩みを止めるわけにはいかなかった。


 もう少しすれば、イヴェルは見つかるかもしれない。

 もう少しすれば、イヴェルに言いたいことを伝えられるかもしれない。

 けれど今歩みを止めてしまったら、それは叶わなくなってしまう。

 そのことが、とても恐ろしく感じた。


 ふと、一つの場所が思い浮かんだ。

 あまり考えたくはなかったが、一度頭の中にそのことが浮かぶと、俺の脳に絡みつくかのように、離れなかった。


 それは、俺たちを殺そうとしているというものだ。

 ただし、イヴェル一人では、それは実現できない。

 それは彼女もわかっていることだろう。


 そうなれば、答えは一つだ。

 俺は星雲荘へと走った。

 そこで車に乗り、JAXAにいるはずの俺たちを排除するために作られた対策本部へといくはずだ。


 けれど、イヴェルの話を鵜呑みにするような連中ではないだろう。

 なぜそのことを知っているのかと問われ、自らが侵略を計画しているチャコフ星人だと知った時、彼らは彼女に何をするだろうか。


 きっと俺らでは考えられないような拷問を喰らうのだろう。


 そのことは、俺も望んではいないし、イヴェル自身も望んではいないだろう。


 イヴェルに辛い思いはさせたくない。


「待ってろよ…イヴェル‼︎

 今俺がお前の道を作ってやるからな…俺はお前に傷ついて欲しいなんて思っちゃいねえんだ。

 俺はただ、お前に苦しんでほしくないだけなんだ。

 だから、いかないでくれ。

 遠くへなんて、いかないでくれ……」


 フォクシーは疲れを置き去りにするような勢いで走った。

 走って走って、走り続けて。

 ようやく星雲荘へ辿り着いた時、


 そこには、見知らぬ人物たちが、俺の部屋へ入っていく姿が見えた。

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