第34話: フォクシー ~フォクシー~
家の中に入った人の数は、今見える範囲での半数程度。
そして、残りの半数は外で見張りをしている。
おそらく、外部からの襲撃を恐れているのだろう。
そのせいで、中にフュースがいるはずの星雲荘へ入ることはかなわなかった。
「あぁ、なんて俺は無力なんだ」
今更気づくその言葉は、あまりにも遅すぎた。
「もしもし、もしもし‼︎
おい、頼むから出てくれ‼︎」
仲間にも連絡をとっているが、一向に電話は繋がる気配がない。
俺は最後の望みをかけて、クラベルに電話をした。
「もしもし、今すぐ星雲荘へきてくれ。
地球人たちにその場所が襲われた」
せめてもの足掻きとして、クラベルを呼ぶ。
声の調子からして、クラベルはまだ無事なようだ。
俺の家に人が入って数分後、フュースが地球人たちに自由を奪われた状態で車に乗せられようとしていた。
「ごめん。遅くなった」
今にもフュースが車の中へ入れられるという時になって、クラベルはきた。
「クラベル! よかったきてくれたんだ‼︎
今フュースがあの車に入れられた。
あそこからフュースを助け出してくれ」
俺がまだエンジンのかかっていない車を指差すと、クラベルは何も言わずに頷くと、車へと突っ込んでいった。
「さてと、俺は中にいる連中と話し付けに行きますかっと」
今向こうの状況は、クラベルのおかげで、はちゃめちゃになっているはずだ。
その隙に、中に入ることができれば、向こうのリーダーを抑えることができるかもしれない。
そうすれば、多少なりとも勝機は見えてくる。
俺は素早く星雲荘の中へ入ると、家を探索している男の首根っこを掴んだ。
「おい! 俺たちの仲間をどこへやった‼︎
お前が、お前らなんだろ?」
ほとんど罵声に近い声に奥にいた地球人たちもやってきた。
「てめえ! そいつを離しやがれ‼︎」
地球人のの中でも比較的小柄。
子供と思われる地球人が俺に向かってタックルをかましてきた。
咄嗟のことで避けることができず、俺は、子供の頭突きに近い突進をもろにくらってしまった。
それを遠くで見ていたらしいイヴェルが駆け寄ってきた。
「イヴェル……」
俺は必死に叫ぶが、健太が頭突いたところが痛み、その声はイヴェルには届かなかった。
イヴェルはとても落ち着いた、けれど冷酷な瞳で俺を見つめてきた。
「フォクシー。あなたはあの時、私を捨てました。
その時、助けてくれたのは地球人でした。
私たちチャコフ星人は、この星には必要ありません。
ここの人はあなたたちと違い、とても優しい心を持っています。
そんな中に私たちが入ってしまったら、とても迷惑でしょう?」
俺は初め、イヴェルが何を言っているのかがわからなかった。
確かに、俺はイヴェルを突き飛ばした。
それが彼女が幸せになれると思ったから。
そこに手を差し伸べた地球人というのはおそらく、隆太郎、理恵子、健太の三人だろう。
彼女が地球人を頼るとしたらそれは、行動を共にした人たちだと容易に想像がつく。
けれど、その後はどのような意味なのだろうか。
俺たちが邪魔?
俺たちがいることでこの星にとって迷惑?
迷惑なのは、俺たちではなく、俺たちの邪魔をし、自らの星を滅ぼす道を歩んでいる今の地球人なのではないのか?
なぜイヴェルは地球人側に立っているのだ?
「イヴェル…? お前は……」
これ以上の言葉を俺の口から言うことはできなかった。
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