第18話: あの子って…… ~沙織~

「あの子、香穂ちゃんだっけ?

 どうしたんでしょう。

 急に思い出したかのように出て行っちゃいましたけど」


 沙織と柏木は今、対策本部に戻り、柚原と梅津、他数名と会議を行なっていた。


 今回の会話のデータは全て残してある。

 そうなるように沙織があらかじめカメラを設置しておいたからだ。

 今は、そのカメラを当時現場にいなかった人に見せているところだった。


「なるほどね。この子が地球を差し渡すと言ったのか。

 けど、チャコフのやり方にはやはり賛同できんな。

 これじゃあ脅迫しているのと同じじゃあないか」


 柚原は不機嫌そうだった。

 それもそうだろう。

 チャコフの存在をいよいよ認めなければいけなくなったし、何より、そのやり方が気に食わなかったからだ。

 それに答えたのは、梅津だった。


「そうですよ。そう言わざるを得ない状況を作って、地球を渡させるなんて。

 悪質にも程がありますよ。

 やっぱ地球人を全滅させるのが目的なのかな。

 チャコフ星の寿命が来るという話まで嘘に見えてきます」


 確かにそうだ。ここまで脅迫してまで地球を譲らせて住み込もうとしている種族の、一つ一つの言動を疑わなければならなくなる。

 そうなったら信用問題として、話をすることに意味はなくなってしまう。

 もともと対話をするという選択肢がない場合、確かに信用問題などと気にする必要はない。

 ただ武力で解決すればいいのだから。


 こちら側を信用させないメリットはなんなのか。

 それとも、侵略するから、どうせ全滅させるから関係ない、そう思われているのかも知れない。


 そう思われているのなら、こちら側から攻め入ることにおり、相手を油断させた状態からの攻撃ができるかも知れない。


 これはチャンスかも知れない、と密かに思う沙織だった。

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