第13話: いっしょにあそぼ ~隆太郎~

 香穂が転校してきて一週間が経った頃、僕たちは一緒に遊ぶ約束をしていた。

 いつもなら、理恵子か隆太郎の家で遊ぶのだが、一緒に遊んだことがない香穂は二人の家がわからなかったのだ。

 どこに集合すればいいかと聞いた時、香穂が選んだのがタコ公園だった。


 タコ公園につくと、そこには10人ほどの小学生たちが、サッカーをして遊んでいた。

 そのうちの一人が妙に既視感があったため、よく目を凝らして見てみると、大人気なく走る健太の姿であった。


 僕は苦笑しながら健太の元へ行くと、


「ケンちゃん、この子達のゲームをつまんなくさせちゃダメだよ」


 そう言って、健太の腕を引いて公園の端の方へと連れて行った。


「なんだよケチ。

 ちょっとくらいいいじゃんけ」


 健太は口を尖らせていうけれど、さっきまでいた場所を見ると、諦めたようにため息をついた。


「わかったよ」


 そういうと、公園のバリケートの上に座りながら、指をいじり始めた。

 ちょっと言いすぎたかもしれないと思ったけれど、話しかけるのも気まずくなって、結局健太の隣で座っていた。


 二分くらい座っていると、香穂が来て、その一分後には理恵子が来た。


「お待たせ〜。待った〜?」


 あまり謝っているようには聞こえない。

 あまりに軽い雰囲気で理恵子が集まると、健太の調子も少しずつ戻ってきて、テンションも上がってきたようだ。


「よっし、今日は何する?

 あいつらみたいにサッカーでもする?

 それともリュウのとこでゲーム………?」


 あまりにもやりたいことが多すぎて、一日で全てやるのは難しそうだ。


「ちょっとケンちゃん。

 せっかく今日は香穂もいるんだから、香穂のやりたいことやろうよ」


「えぇ、私?

 いいよぉ。ケンちゃんが好きなもので…」


 香穂がかぼそい声で言うけれど、健太には聞こえていなかったようだ。


「それもそっか。

 香穂、やりたいことある?」


 しばらくの沈黙の後、香穂はぼそっと答えた。


「ザナムトキ」


 全く聞き覚えのない言葉に、僕は混乱した。

 周りを見ると、健太や理恵子も意味がわからないと言うふうに、首を傾げていた。


「えっと、それってどんな遊びなのかな?」


 理恵子がためらいがちに聞くと、香穂は一瞬驚いたような顔をして、緊張した時に見せる、冷血な瞳で僕たちを見つめてきた。


「………。」


 しばらく気まずい無言タイムが続いた後、ゆっくりと、香穂が口を開いた。


「ごめん。なんでもない。

 それより、もっと人を呼んで、鬼ごっこでもしない?」

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