第17話 ハイスペック美女二人が喫茶店のアルバイトに参上
「いらっしゃいませ。ご注文はいかがいたしますか?」
「おう、ランチセットな。今日はチキンカレーにサラダだ」
数日後の土曜日、お昼。
実家の両親に二人のアルバイトの話をしてみたら、二つ返事でOKが出た。
学業に支障の無いように、と二人に約束してもらい、本当にあいた時間だけで、とお願いした。
今日からアルバイト開始だが、なんだか二人がいると、見慣れた喫茶店の店内が別空間のようだ。
「いやぁ、いいね! なんというか、二人がいると一気に店内が華やかになるよ!」
「ほんと、ずっといて欲しいわぁ。リュー、さっさと結婚しちゃいなさい」
両親が大興奮で二人をべた褒め。
まぁ、実際華やかなのは同意。
俺の幼馴染みであるハイスペック美女二人、ミナトとカレンは見た目がモデルさんとか芸能人級。ただ立っているだけで絵になるレベル。
うーん、マジで二人の存在感がすごいな。
うちは特に制服は無く、私服に喫茶店の名前が入ったエプロンを付けるだけ。
黒髪お嬢様ミナトは、豪華な白いドレスみたいな服で現れてびっくりした。金髪ヤンキー娘のカレンは黒いシャツに金の刺繍入り黒スカート。なんか二人とも気合が入っている?
私服もじゅうぶん魅力的だが、これ、二人にメイドさんみたいな制服着てもらったら集客効果がえげつないことになりそう。
しまったなぁ、用意しておけばよかった。
……二人が着てくれるかは分からないけど。
黒髪お嬢様ミナトと金髪ヤンキー娘のカレン、二人とも長くて綺麗な髪を結んでポニーテールにしているのだが、これも破壊力が高い。
うん、俺への破壊力が特効クラス。
「……ズン、ズン。ズン、ズン」
俺の背後から不気味なリズムが聞こえるが、これはミナトの運転手であるイケメンハーフ、ジェイロンさんが働くミナトの写真を撮りまくっている音。
記録とか証拠と言っていたが、俺には言葉の意味が分からなかった。
「うわぁあああ、すごいねリュー兄! 二人がいると、なんかそういうお店みたいだね!」
妹のリンもミナトとカレンがうちでアルバイトをしていることに大興奮で、こちらも謎の言葉を発している。
なんだよ、そういうお店って。
リンよ、お前は十三歳にしてどういう知識を持っているんだ。
お兄ちゃんはお前の将来が不安だぞ。
お昼を過ぎたころ、なんか近隣に『喫茶店にとんでもない美女二人がいるぞ』と噂が広まったらしく、外に行列が出来るほどの混雑となった。
うーん、やはり二人の集客力はすごい。そこにいるだけで、商売が成り立つレベルだ。
この際、握手券でも売ってみるか? 冗談だけど。
夕方、二人の今日のアルバイトはここまで。
「ああー、とっても楽しかったよ、リュー君! 料理を作っているリュー君の横顔とか後ろ姿とかいっぱい見ちゃった、ふふ」
「おぅ、もう終わりか。相変わらずここの喫茶店、居心地いいよなぁ。キッチンに戻るとリューが真面目な顔で料理してっから、休憩するふりして見ちまってたよ、あははは」
幼馴染みの美女二人が疲れも見せずに笑うが、そういやときたま二人が動きを止めていたけど、そういう理由かよ。
料理っても、野菜の皮むいたり、お皿とか鍋とかの洗い物だけどな。
「ありがとう二人とも。おかげですごいお客さんに来てもらえたよ。じゃあ今日はここまでで、また明日……」
「私は温かいお蕎麦セットをお願いしますね、ふふ。じゃあリュー君、個室に行きましょうか」
「悩むけど……よし、私は三種のフライ盛りにしよう。うし、歌うぞリュー!」
明日、日曜日もまた来てくれるとのことなので二人にお礼を言うが、二人がキッチンにいる両親に向かって何かを注文。
ん?
ミナトとカレンが俺の手を引っ張り、カラオケが出来る個室へ連れていかれる。
あれ……? 帰らないの二人とも……これから歌うって……疲れとか、ないの?
「あぁー~ぁあああ~ー彼の人生はこれからも~ああぁあ~」
よく分からないが、カラオケが出来る個室でみんなで夕飯。
トップバッターでイケメンハーフのジェイロンさんが、オペラみたいな歌い方で何かの歌を熱唱。彼はチキンカレーセットを注文。
「リュー兄、次私ね! キラキラ魔法少女の七変化歌うから!」
妹のリンが親子丼セットを食べながら、俺からカラオケのリモコンを取り上げる。
多分女児向けアニメの歌なのだろう。
……そしてこの二人はなぜいるのか……。
「ううーん、お蕎麦美味しいー。こういう騒がしい夕飯とかうちではあまりないから楽しいなぁ」
黒髪お嬢様ミナトが温かいお蕎麦セットを笑顔で食べる。
「この白身魚のフライうめぇな! アルバイト終わりに夕飯食いながら歌えるとか、リューの家、最高すぎだろ」
金髪ヤンキー娘カレンが揚げ物セットを食べ、歌う曲を厳選している。
俺は騒がしい個室でかつ丼を食べながら思う。
これ、何の打ち上げなの──
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