第11話 ホテルから見えた花火と俺のとても大事な人
「きゃっ……!」
「うぉぉ! なんだこれ……不自然に絡みつく!」
俺はホテルの備品である二枚の高級バスタオルを、裸のハイスペック幼馴染み二人に放つ。
バスタオルは二人の美しい身体に絡みつき、ぐるんと一周。
見事、R-なんたら的にも隠したほうが良い部分をバスタオルで保護し、健全なビジュアルを確保。
ふぅ、上手く技が決まってくれたぜ。
俺の腕が良いのではなく、高級なバスタオルは身体に絡みつきやすいんじゃないかな、多分。
いや、それでも裸にバスタオル一枚という姿は充分エロいんですけどね。
それにしても、ミナトとカレンの肉体的な成長具合いがすごいな。
二人を子供の頃から知っているから、余計に比較出来てしまう。
「じゃあ俺はホテルの大浴場に行ってくるから。あまりはしゃがないようにな」
とりあえず二人には落ち着いてもらい、俺は部屋の露天風呂ではく、階下にあるホテル施設の大浴場に行くことにする。
「……ちぇー、失敗しました。リュー君だって年頃の男の子ですし、二人で迫れば行けると思っていたのですが……」
「私、結構良い身体してると思ったけど……まだまだリューには届かなかったか。にしても、こんな良い女二人に裸で迫られてるのに、それでも私たちを大事にしようというリューの想いはすげぇな。改めて惚れたぜ、リュー」
大浴場(男)。
さすがに高級ホテル、広くて清潔感あって満足度が高い。
家のお風呂じゃあこの解放感は味わえないよな。
あれ、あそこにいるの、ミナトの高級車の運転手、ジェイロンさんだ。
うわ……服の上からでも鍛えているのが分かったが、裸だとすごいな。スマートなのに、筋肉の付き方が芸術的。
美術作品のモデルみたいだ。
「やぁ、リューイチ君。もう終わったのかい? んー、まだこれからかな? タイムリミットまでにはまだ余裕があるけど、あんまり待たせないようにね。……ずっと一人で耐えているけど、ミナトお嬢様はまだ十六歳なんだ。ああ見えて、強くはないんだよ。支え、それが欲しいんだ。うちのお嬢様をよろしく頼むよ、リューイチ君」
向こうが俺に気付き、笑顔で近付いてくる。
「え、あ、は、はい……」
何か意味深なワードをツラツラと言われたが、今の俺には意味が分からず。
ジェイロンさんがニッコリ微笑んでサウナ施設へ向かう。
……タイムリミット? 支え?
さて、どういう意味なのだろうか。
「ふぅ、大浴場最高だったよミナト」
ホテルの客室に戻ると、幼馴染みのハイスペック美女、ミナトとカレンもお風呂上りらしく、冷たいペットボトルのお茶を飲んで涼んでいた。
「いえいえ、どういたしまして。ここは将来リュー君にとっても家みたいな場所になりますし、遠慮とか一切しなくていいんですよ?」
黒髪お嬢様、ミナトがホテルでレンタル出来る浴衣を羽織り、ニッコリ微笑む。
うわぁ、子供の頃に浴衣姿は見たことがあるが、成長してからの浴衣姿は……なんかこう、エロいな。
言っている言葉の意味は分からないけど。
「おうリュー、備え付けのボディソープ使ったんだけどよ、これがすげぇ良い香りなんだよ。ほら、甘い香りだろ?」
金髪ヤンキー娘カレンもレンタルの浴衣なのだが、こちらはちょっと雑に着ていて、大きめに開いている胸元が、結構見えてしまっている。
立ち上がったカレンがその胸元をさらに広げ、俺の頭をグイと掴み引き寄せてくる。
「わ、ちょ……」
目の前に広がるカレンの大きなお胸様。
そして確かに花のように甘い香りがする。多分、お高いボディソープなんだろうな、これ。
しかし……カレンの肌は綺麗だな。お風呂上がりでしっとりとしていて、目の前には温かくて柔らかそうな大きな膨らみ、思わず手が伸びそうになる。
「ほ、本当だ。良い香りだね、これ……」
おっと危ない、危うくカレンの大きなお胸様を触ってしまうところだった。正気に戻れ、俺。
「あれれー、今なんか右手がカレンの胸に伸びかけませんでした? リュー君~?」
「ま、まさか、あははは……」
黒髪お嬢様ミナトがムスっとした顔で迫ってきたが、俺は慌ててカレンから離れる。
すると、窓の方からドーンと大きな音が響き、部屋の中がパッと明るくなる。
「お、花火か? すっげぇな、こんな近くの特等席で花火が見れるとか、最高だろ」
金髪ヤンキー娘カレンが窓の方に走り、音の正体を確認。俺も窓に近寄り見ると、海のほうで大きな花火が次々と上がっていた。
ほー、これは綺麗だ。
「ふふ、これもホテルのサービスなのです。当ホテルではお客様の思い出に残る極上のサービスと体験、をテーマにやっております。出来ましたら今後もご贔屓に」
ミナトが慣れた感じの営業トークをし、頭を下げる。
初めてこのホテルに泊まってみたが、ミナトが言うだけはあり、サービス、料理、施設の質の高さは素晴らしいと思う。
ただ……ちょっと高校生の俺には費用面での不安が強いかな……。
こういう素晴らしいホテルに、いつか大事な人を連れてきたいものだ。
「……大事な人、か……」
そう小さく呟き、周囲を見てみる。
俺の左側ではミナトが、右側ではカレンが打ち上がる花火を笑顔で見ている。
「どうしました、リュー君。ほら、海面にも花火が反射して綺麗なんですよ? ふふ」
「おうリュー、こういうデケェ花火は迫力あって最高だな。でも私は子供の頃に三人でお金出し合って、スーパーで買った手持ち花火。あっちのほうが思い出の中で輝いているなぁ」
俺の視線に気付いた二人がそう言い、俺の肩に頭を乗せてくる。
ああ、やはりミナトやカレンと一緒にいると、楽しいし安心するな。
……将来の大事な人なんて、今の俺には想像もつかない。
でも今俺が守るべき大事な人は、とても近くにいるんじゃないか。
二人の体温を感じながら、俺はそう思った。
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