第8話 俺の部屋に半裸のハイスペック美女が



「ええっと……パ、パンケーキここに置いておくね……」



 喫茶店の二階にある俺の部屋のドアを開けると、そこには幼馴染みのハイスペック美女二人が一心不乱にベッドで身体をクネらせていた。


 半裸で。



「ま、待ってリュー君! これには事情があるの……!」


「ははは、子供の頃は小さかったけど、やっぱリューも男として成長してんだな!」


 黒髪お嬢様ミナトが顔を真っ赤にさせながら俺のベッドから跳ね起き、両手をブンブン振ってくる。


 金髪ヤンキー娘カレンはあまり動じず、部屋から一時避難しようとした俺の肩をガッツリ掴み爆笑する。


 これは一体何が起きている……? 思い出せ、冷静に思い出すんだ。



 ええと、一階の喫茶店が満席だったから、幼馴染みの二人には俺の部屋で待ってもらっていた。


 パンケーキが出来たので、二階の俺の部屋にそれを持ってきた。


 うん、俺の記憶に間違いはないよな。


 そしてこの回想のどこにも彼女たちが半裸になっている要素はない。


 よし、大きな声で言うぞ……なんだこれ!



「お、おいお前ら何で半裸……! 早く服を着ろ……!」


 いや、正確には彼女たちは服を着ている。そう、俺の服を。


 なぜか彼女たちはさっきまで着ていた自分の服を全て脱ぎ、裸の上に俺の服を着ているのだ。


 その証拠に、ベッドの横にはミナトの服が丁寧に折りたたまれ置かれ、その横には投げ捨てたであろうカレンの服が散らばっている。


 そして脱いで置かれた服には、その、あまり凝視してはいけないが、彼女たちの下着も含まれている。


 そう、つまりミナトとカレン、二人とも全裸の上に俺の服を着てることになる。


 分からん……全く状況が分からん……! 


 でもエロいのは確か……。


 ハッ、もしかしてあれか、彼女たちがさっきまで着ていた服はお出かけ用であって、室内用ではない。


 俺の部屋では床に座って食事となるが、それでは服にシワがついたり、汚れてしまうかもしれない。だから彼女たちは汚れてもいい服に着替えをした。


 ……これが俺の少ない脳で出せる限界の思考なんだが……。


 ではなぜ彼女たち、ミナトは俺が普段寝るときに着ている青色のジャージを裸の上に着用し、カレンは俺の高校の制服を裸の上に着ているのか。


 俺の服なら汚れてもいいってことかー! 


 ……いや違う、これでは何で下着まで全部脱いで、裸の上に俺の服を着ているかの説明には程遠い……ああもう、マジでなんなんだよ、これ!


 つか半裸の女性二人を直視出来ん! 


 服着ろ……!



「違うんだよリュー君! 子供の頃以来のリュー君の部屋で二人とも興奮しちゃって、ここでリュー君が毎日生活しているんだ……って考えたら止まらなくなって、しかもリュー君がいつも着ている服があったから迷いゼロで着てみたんだけど、服の上から着たんじゃ直のリュー君を感じられないってなって、やっぱり素肌の上に直に……ってなっただけなの!」


 黒髪お嬢様ミナトが真っ赤な顔で早口でまくし立ててくる。


 やっぱり素肌の上に直にってなっただけなの、の何がやっぱりなのかさっぱり分からない。

 

 ミナトさん、裸の上に俺の紺色のジャージを着ているが、当然サイズが合っていなくてブッカブカ。


 動くたびにチラチラ色々中身、素肌と柔らかくて大きなお胸様の膨らみが見えてしまって、俺もう正気を保てそうにありません!


「やっぱリューも男なんだな。制服着てみて納得しだぜ。よし、お前の身体と想いは理解した。じゃあ……来い、リューの欲は私が受け止めてやる」


 金髪ヤンキー娘カレンが裸の上に俺の男物の制服を着ているが、上着の前を開けているもんだから綺麗なお腹とか丸見え。大きなお胸様もちょっと……見え……。


 カレンは普段から肝が据わっているからか、俺に半裸を見られているのに全く動じず、顎をくいっと上げ目線だけ下げ俺をロックオン。


 そして右手を前に出し、指をくいくい動かし挑発ポーズ。


 なにこれ。


 ちょっとした女番長じゃん、これ。


 そして似合うなーカレン、こういう格好。


「え……ちょ、リュー君、私のときは目を閉じたり避けたりしていたのに、どうしてカレンの裸だけはボーっと凝視なんですか? おかしいです! 確か私のほうが胸は大きいはずですよ!」


 カレンはこれに学帽とか被ったら、格闘ゲームのキャラみたいだな、と思っていたら、脇からミナトが激怒で突撃をかましてきた。


 ごほぅ……油断した……カレンがゲームキャラだとしたらどういう技があるか妄想していたせいで、ミナトのタックルに耐えきれなかった。


「うわぁああ……う……?」


「……お? 来たかリュー、いいぜ……欲の強さには、上には上がいるって思い知らせてやるぜ……ははは!」


 俺はミナトのタックルに身体のバランスを崩し、目の前にいるカレンの胸めがけ抱きついてしまう。


 …………いい香り……そしてなんだろう、この顔全体を包む柔らかくて暖かいものは……落ち着く……。


「またカレンだけに……! ずるいです! 私だってリュー君に抱かれたいのに……!」


 今度は後頭部に柔らかくて大きな物が押し当てられる。



 ダメだ……もう俺には状況の説明が出来ない。


 すまないが、ここで一回セーブさせてくれ……














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