第27話 ハイスペック美女二人の歌とダンス
「うわぁぁ……すごい、ゲームセンターってやっぱりすごいです……あちこちから音がいっぱい鳴っています!」
日曜日。三人でお買い物。
夏休みは俺の夢であったフェリーの旅を予定していたが、二人も一緒に来てくれることになった。
必要な物を見に駅前に来た……のだが、なぜか黒髪お嬢様ミナトが大興奮でゲームセンターに突撃していった。
何事……。
「見てくださいリュー君! これ踊るやつですよね。リズムに合わせてボタンを踏んだり押したり、動画で見たやつです!」
ミナトがリズム系のゲームを指し、何かを踏む動作をして、やる気満々。
……以前映画を見に行ったとき、ゲームコーナーにあるクレーンゲームをやったのだが、ミナトにとっては普段来ない場所なので、興味津々だったらしい。
中でもこの踊るやつ、音楽に合わせて足や手でボタンを押すリズムゲームがどうしてもやりたくて、動画検索で色々見まくったらしい。
「……やるか。これ二人同時に出来るから、まずは俺とカレンでやってみるよ。それ見てルールを覚えてくれ」
カレンに合図し、お金を投入。
確かカレンはこういうの得意だったはず。俺は……普通。まぁ出来ますね、ぐらい。
「おぅ、久しぶりだぜ。こういうのは踊りながらやったほうがリズム取れるから、恥ずかしがった奴の負け、だな。あはは」
選曲は……お、演歌あるのか。
カレンは演歌好きだから、これにするか。カラオケでもよく歌うやつだし、いけるだろ。
「おぅ、いいね、そう、ここでグイっとコブシ効かせて……そう、ドン! ああもう、これ歌ったほうが早いな。波を突き抜け日本海~」
俺とカレンがリズムよくステップを踏み、曲に合わせてボタンを押す。
うん、やはりカレンは身体のキレが良い。特に足の動きの速さは一級品。
しかし好きな演歌を歌わずに踊るだけ、に不満が溜まってきたらしく、カレンが途中から歌いながらダンス。
カレンは歌も踊りも上手い。横で一緒にプレイしている俺も見惚れてしまうレベル。
「なるほど……歌ってしまえばリズムが取りやすいんですね! 覚えました!」
後ろで見ている黒髪お嬢様ミナトが興奮しているが、うーん、周りに迷惑じゃなきゃあいいのかな?
ってミナトの後ろに観客がたくさんいる……!
カレンは見た目がモデルさんとか芸能人クラス、そこに加えて歌と踊りが上手いので、何かのパフォーマンスかと思われて人が集まってきたようだ。
「すげぇええ!」
「いいぞ、もっとやれ!」
ゲームが終わってみると、俺たちを囲むように集まった観客から声援が。
「じ、じゃあ次は私ですね……! が、がんばります!」
え、この中でミナトもやるの?
「お、じゃあ私が一緒にやるぜ。歌えばリズム取れっからよ、いくぜミナト!」
「うん!」
二人が握手し、ゲームスタート。
「気になるあの人のハートを響かせる、私の歌声は~」
ミナトとカレンが並んで軽快に踊り、歌う。
当然ミナトも歌が上手いので、観客が大盛り上がり。
……うーん、マジで芸能人とか歌い手さんのコンサートに来た雰囲気だぞ、これ。
しかもミナト、これ系のゲームは初めてらしいが、今のところノーミス。
「いいぜミナト! 最後まで行くぜぇ!」
「うん、これ楽しい!」
二人が途中、パチーンと手を合わせる。そういう余裕すらあるレベルか。
「よし……いったぜパーフェクト!」
「やった……! うわぁ行けたよリュー君!」
ゲーム終了。
終わってみると、二人ともノーミスのパーフェクト。
「おおおおおお!」
「何、プロの人? うまいなぁ」
集まった観客の二人への称賛がすごい。
俺も見ていたが、二人とも見た目がまず映えるし、歌も上手い。さらに踊りも完璧で、ゲームは二人パーフェクトクリア。
本当にお金が取れるレベルの演舞でした。
「次頼むよ次ー」
「もう一曲! もう一曲!」
……これ以上の盛り上がりはまずいか。
俺は二人の手を握り、ゲームセンターを後にする。
後ろからブーイングがすごいが、悪いが今日の目的、これじゃあないんだ。
「あー楽しかったぁ……今はあのようなゲームがあるのですね。動画では見ましたが、実際やってみると興奮してしまって、身体が熱いです。ふふ」
黒髪お嬢様ミナトが満足気な良い笑顔。
「初めてでアレかよ、才能あるぜミナト。あはは」
金髪ヤンキー娘カレンがミナトを褒めるが、マジで何度かやっている俺より上手かったしな。
少し休憩してから旅行バッグや服などを見て回る。
まだ夏休みまでには期間があるし、とりあえず見ておけばいいだろう。
「おっと、妹から連絡だ。今晩のおかずなぁに? かな。悪いがちょっと席を外すぜ」
大体見て回ったので商業施設のフードコートで飲み物休憩。
すると金髪ヤンキー娘カレンがチラリとミナトを見て、携帯端末を取り出す。
「分かった。ここで待ってるよ」
「ああ、すぐ戻るよ」
手を振りカレンを見送る。
まぁフードコートで電話は、周りに迷惑と考えたのだろう。
「…………リュー君。少しお話を聞いてくれますか?」
さて、たこ焼きでも追加で買おうかと思っていたら、黒髪お嬢様ミナトが真っすぐ俺の目を見てくる。
いつもミナトはニコニコとした笑顔なのだが、少し困ったような顔と低めの声。
カレンが離れていくのをじーっと見て、タイミングを計り口を開いてきた。
さっきまでの楽しい雰囲気ではない。
お話、さて何だろうか。
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