第26話 二人に初めてのアルバイト代と夏休みに向けてのお買い物




「ミナト、カレン。はい、アルバイトいつもご苦労様。お給料になります」


「うわぁ、ありがとうございます。リュー君に貢がれちゃった」


「おお、悪いなリュー。ここのアルバイト、居心地良すぎてお金が発生するのを忘れていたぜ。つか、リューに会いに来ているだけなんだよなぁ」



 土曜日、俺の幼馴染みのハイスペック美女二人、ミナトとカレンにお給料を渡す。


 振り込みが普通なのだが、二人が俺からの手渡しがいいと希望され、直接の手渡しに。


 ミナト、俺はお前に貢いで渡しているわけじゃあないって。


 労働の対価。


 カレン、別に俺に会いに来てお金が発生しているわけじゃあないぞ。

 

 こっちも労働の対価だ。


 二人とも、マジで物覚え速いし、お客さんの反応良いしで、もはやうちの看板娘状態。



「これで夏休みには、リュー君との愛の逃避行が出来ますね、ふふ」


 黒髪お嬢様ミナトがお給料の入った封筒を顔の横に掲げ、ニッコリ笑顔。


 愛の逃避行ってなんだよ。夏休みには俺の夢だったフェリー旅に、三人で行こうってお話だぞ。


「そういや船の旅って、どこ行くんだ? 必要な物とかあるのか?」


 金髪ヤンキー娘カレンが俺に聞いてくるが、そういやフェリーに乗るんだっていう夢であって、どこに行くんだ、みたいな欲ではないな。


 はて、どこがいいだろうか。


 そしてフェリーで目的地に着いた後、帰りはどうするんだろうか。


 うーん、やばいぞ、なんにも考えていない……。


「えーと、酔い止め……とか?」


 とりあえず船は揺れる。酔いやすい人は対策しないと、結構キツイらしい。


 ……それぐらいしか思いつかないが。


「酔い止め、まぁ確かになぁ。あれか、普通に旅行に行く感じでいいのか」


「その感覚で大丈夫だと思いますよ? では今度、三人で必要そうな物の買い物にいきましょうか、ふふ」


 まぁ基本旅行感覚でいいのでは。つか行ったことないので、分からないけど。


 ネットで調べて、必要そうなものを買い足すか。


 ミナトが三人で買い物に行きたそうなので、それに乗っかろう。




 翌日日曜日。


 今日はアルバイトをお休みして、初めてのお給料を使ってのお買い物day。


 歩いて行ける駅前のスーパーや雑貨屋、あとは高校生らしく百円均一ショップなどで工夫だな。ネットで買うほうが安い場合もあるし、そこは臨機応変にいこう。


 多分ミナトは三人で楽しい買い物に行きたい、が本音だろうし。



「お待たせしました、リュー君。ふふ、最近ずっと一緒にいれて嬉しいです」


 今日も俺の実家の喫茶店の前で待ち合わせ。


 いつもの黒塗り高級車から、ニッコニコ笑顔で黒髪お嬢様ミナトが降りてくる。


 ゴールデンウイークに三人で映画を見に行ったとき、三十分前にミナトが現れたので今回はどうなのかと思ったら、マジで三十分前行動で現れた。


 ミナトの私は絶対に遅れません圧がすごい。


「ちぇ、遅かったか……早く来れば、ミナトが来るまでリューと二人きりの時間だぜ、と思ったのによぉ」


 少し遅れて金髪ヤンキー娘カレンが登場。


 カレンが出遅れたことにブツブツ文句を言い始めるが、いや、二人とも三十分前に来るとかすごいと思いますよ。普通に守れない人だっているし。


 もしかしたらこの二人に限っては、本当の集合時間の三十分後を指定したほうが、ちょうどの時間で来るのでは、と思えてしまう。


  

 黒髪お嬢様ミナトは、黒い大きめの帽子に花柄刺繍入りの黒いシャツ、それにふわっとした黒いスカート。


 今日のミナトは黒系か。


 逆に金髪ヤンキー娘カレンが今回は白系。


 白いタンクトップにアンティーク風の色の薄いジーパン、それに白いキャップ装備。


 なんだろう、二人はあまり服の色が被らないな。もしかして、事前に着ていくカラーを連絡しあったりしているのだろうか。



「じゃあ行こうか。駅前だし、歩きだな」


「はーい、ふふ」


「色々事前に調べたけどよ、フェリーだから特別に必要って物はなかったな」


 三人、並んで歩く。ミナトの歩くペースに、自然と俺とカレンが合わせる。


 まぁ子供の頃からの暗黙のルールだ。


 カレンが調べたらしいが、俺も一応ネットで調べてみた。


 基本、旅行の持ち物と変わらない感じだったな。


 酔い止めを事前にドラッグストアで買っておくとか、ご飯を持ち込むなら、こちらも事前に用意しておくべき、とか。


 まぁ少しお値段は張るが、船内レストランとかあるし、そっちをいってみようかと。


 フェリーの大浴場とかのお風呂の時、備え付けのシャンプーが身体に合わない可能性もあるので、いつも使っているやつを小分けして用意したほうが良いかも。


 小分け用の入れ物は、百円均一ショップでいいかね。


 まぁ俺はシャンプーとか、何でもいいけど。




 駅前に到着。


 ええと、大型商業施設もあるけど、どこに行こうか……


「ではリュー君! まずはゲームセンターに行きましょう!」


 最初は百円均一ショップでも見るか、と思っていたら、黒髪お嬢様ミナトが興奮した様子でゲームセンターを指す。



 ん? フェリーの旅行に必要な物を見に来て、まずはゲームセンター?


 はて、ゲーセンに旅行用のグッズってあったっけ?
















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