第18話 ミナトとカレンのメイド服




「あー、最高に楽しかったです。これがアルバイト、なのですね」


「なんか子供の頃から慣れ親しんだリューの喫茶店でアルバイトって、不思議な気持ちだったぜ」



 夜、俺の幼馴染みのハイスペック美女二人が満足気な顔で笑う。



 お昼から夕方まで俺の実家の喫茶店でアルバイトをしてもらったのだが、終業後に夕飯食べながらカラオケ大会になり、今やっとお開き。


 かなりの曲数歌っていたけど、体力とか大丈夫なのか、二人とも……。


「今日は本当にありがとうミナト、カレン。明日もあるんだけど、大丈夫かな……」


 今日と日曜日の二日間のアルバイトを予定しているのだが、初日でテンション最大値叩きだして、カラオケまでやってしまったけど、明日も来てくれるんだろうか。


「全然大丈夫です! だって明日もリュー君と長時間一緒に過ごせるんですよ? もう今から明日が待ち遠しいぐらいです。ふふ」


 黒髪お嬢様ミナトがピョンピョン跳ねながら言う。


「すっげぇ忙しかったけどよ、なんかこう、この頑張りを全部リューが見ていてくれて、しかもご褒美まであるって言うんだから、内からモリモリとパワーが湧いてくる感じだったぜ。あはは!」


 金髪ヤンキー娘カレンが、シャドーボクシングのように素振りをしながら華麗なステップを見せてくる。


 フットワークが軽すぎる、この幼馴染みたち……。


 ご褒美? 最後にやったカラオケのことか? それならまぁ、明日も出来るとは思うが。


「うちのジェイロンまでお世話になってしまって、ごめんなさい、リュー君」


 ミナトが謝ってくるが、ジェイロンさんってのは彼女の運転手のイケメンハーフのこと。


 アルバイト中、携帯端末をずっとミナトに向け撮影をしていたが、あれはなんだったのか。


 そして終わったあと、まぁ俺が誘ったのもあるが、一緒に個室で夕飯を食べ、突如一番手でマイクを持ち、すんごい美声で熱唱。


 その後、気分が乗って来たのか、上着をズバっと脱ぎだし上半身裸で子供向けアニメの歌を決めポーズ満載で大熱唱。


 主人であるミナトはその姿を見て大爆笑だし、カレンも妹のリンもゲラゲラ笑っていた。


 多分後半は妹のリンに選曲を合わせてくれたのだろう。俺も笑ってしまったが、いやあれはすごかった。もうジェイロン・オンステージ状態。


「いやいや、謝る必要はないよミナト。楽しかったし、わざわざリンに合わせて歌ってくれたんだから、こちらとしては感謝しかないよ」


「そう言ってもらえると嬉しいですけど、ジェイロンは歌うのが好き過ぎまして……」


 ミナトが申し訳なさそうな顔をしているが、マジで楽しかったし、気にするな。


 そして当の本人であるイケメンハーフ運転手ジェイロンさんは、迎えの黒塗り高級車の前でご満悦顔で主人であるミナトの乗車を待っている。



「それではまた明日ですね、ふふ、今から楽しみです」


「おう、また明日来るぜ。リューの部屋で泊まりじゃないのが残念だったけど、それは今度期待してるぜ」


 幼馴染みの二人が元気に手を振り、帰路へ着く。


 俺の部屋で泊まり? あんな狭い部屋で三人は寝れないので勘弁してくれ……。




 翌日お昼。


 昨日と同じようにミナトとカレンがアルバイトに現れたが、二人ともなにか大きな袋を持っている。


 はて、昨日は無かったが、あれはなんだろう。



「ちょ……マジかお前らぁぁ!」


「うふふ、だってこのほうがリュー君が喜ぶってリンちゃんが言っていました」


「さっきミナトと二人でお店行って買って来たんだぜ。どうだ、抱きてぇだろ?」


 着替えがしたい、というから、昨日カラオケをした個室を解放。


 二人に呼ばれたので部屋に入ると、そこには幼馴染みの美女二人のフリッフリのメイド服姿が。


 な、何これ……うちは別に制服とかそういうルール、無いんですけど!


 つか、二人ともスタイル抜群なもんだから、似合っているどころか、超エロい。


 これうちの喫茶店が別のお店に思われるんじゃ……そういや昨日、リンがそんなこと言っていたが……あいつ……!




「いらっしゃいませ、ご主人様。ご注文は? ふふ」


「おう、見るだけなら許してやる。それ以上しようとしたら……分かってんな?」


 黒髪お嬢様ミナト、金髪ヤンキー娘カレンがそのままメイド服姿で喫茶店に参上。


 途端に湧き上がる大歓声。主に野郎の。


 もちろんお写真禁止。そういうお店ではないので……。


「かわいいよ二人とも!」


「ああ最高ね! 二人も娘が出来たみたい!」


「リュー兄! 見て見て、二人ともすっごい可愛いよ!」


 禁止、なのだが、うちの家族が大興奮で二人の写真を撮りまくり。


「……ズン、ズン、ズンズンズン」


 そして今日も来ているミナトのイケメンハーフ運転手、ジェイロンさんも謎のリズムでミナトの写真を撮りまくる。


 こちらは記録と証拠、らしいが、毎度言う証拠ってのはどういう意味なのか。



 なにやら昨日、二人が俺の両親に相談したらしい。


 この喫茶店には子供の頃からお世話になっているから、出来る限り協力したい。今日お店に出てみたら、私たちを見たいというお客さんが多くいた。ならばそれを特化させて、可愛らしい制服を着て、より多くのお客さんを呼びたい。


 うちの両親はそれを聞いて号泣。二つ返事で了承したらしい。


 ただし、二人が一個だけ条件を出し、それはアルバイトをしているあいだに写真を撮られるのは嫌なので、俺が二人を守る、というもの。


 うちの喫茶店に来るのはご近所さんが多いし、変な客層は来ないとは思うが、一応警備は必要か。



 つかいきなり俺の家族が写真撮りまくっているんだが?


 そして出来ましたら俺も……撮りたい。


 二人とも、超可愛いし。













  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る