第35話 ホテルのお部屋で二時間のご休憩




「ふふ、楽しいですねぇバイキング形式のお食事」


「おお、最高じゃねぇか、これ。好きな物好きなだけ食えるとかよ。あはは」



 黒髪お嬢様ミナトが手に入れてくれた、お高いホテルでのお食事券。


 ありがたくも俺たちを招待してくれ、バイキング形式でのお昼ご飯をいただいている。


 二人も言っているが、うん、楽しいなこういうの。



「フェリーだと、窓の景色が大海原、なのか。いいなぁ、早く夏休みにならないかな」


 今は街の中心部のホテルで、これはこれで景色が良いのだが、海を進むフェリーだと、窓の景色が見渡す限りの海、になる。


 なんというか、非日常みたいな景色。早く見てみたい気持ちが湧いてくる。


「楽しみですねぇ、フェリーでの旅。まさかこの三人で行けるとは思っていませんでした。そして、この三人だからこそ楽しいのでしょうね。ふふ」


「ああ、中学のとき出来なかった、三人での思い出をいっぱい作る。最高の高校生活にしようぜ」


 二人が笑顔で俺を見てくる。


 うーん、マジでこの二人、今はホテル仕様のちょっと良い服+見た目がモデルさんか芸能人クラスなので、高校生には見えないな。


 華やかな大人の女性で魅力的。そこにいるだけで、つい見てしまう。


 そして実際に、周囲の男性から二人に注がれている視線の集中度合いがすごい。



「そうですね、最高の三年間にしましょう。ではリュー君、その為にはこの後が大事なのですが……ふふ」


 黒髪お嬢様ミナトがニンマリ笑顔で俺を見てくる。


「お、おお……行くのかご休憩……。よし、来いリュー! いつかヤるんだし、だったら今だっていいだろ」


 金髪ヤンキー娘カレンも決心した顔で俺を見てくるが……。


 ご休憩って、確かにチケットには、お食事後にお部屋でご休憩出来ます、と書かれていた。


 つまり、バイキング形式だとつい食べ過ぎてしまうお客さんが多いから、お腹が落ち着くまでお部屋でおくつろぎ下さい、だろ?


 俺たちそんな大食いじゃなくて、ちょっとホテルでのバイキングに緊張していたから、動けなくなるような量は食べていない。必要ない気がするが……。


 でもミナトがこの後が大事だの、カレンがヤるんなら今だ、とか言っているな。


 最高の三年間にする為に、バイキングのあとの何が大事なのか、何を今ヤるのか。


 つか『ヤ』って、なんでカレンってカタカナっぽく言うの。



「……行こうか、ご休憩。なんかレストランだと写真撮れないみたいだし、部屋で三人でバイキング食べました記念写真を……」


「来ました………………! ついにリュー君に『君と二人で朝日を見たいな』と誘われてしまいました……! つまりそれは二人の心と身体が一つになる記念日が今日、この後に……!」


「よし、決心したかリュー! そうだよな、リューの性癖って、写真を撮ることによって満たされるタイプみたいだしな。さすがにここじゃ脱いだ写真は撮れないけど、部屋ならそれが可能。最初から部屋行ってもよかったけどよ、飯食ってエネルギー満タンで望む……これはとんでもないご休憩になりそうだぜぇぇ!」


 まぁ食後に休憩は必要か、ついでに記念の写真を撮ろうかな、と静かに誘ってみたら、二人がガタンと立ち上がり、大興奮で饒舌に喋り始めた。


 ……二人同時に興奮気味に早口で言われても、聞き取れねぇ……。


 ご休憩って二時間ぐらいだろ? 朝日は無理だよミナト。


 そして俺の性癖を勝手に決めないでくれ、カレン。


 記念写真を撮るのが性癖って、意味が分からないし。




 チケットを最大限利用して、ホテルの客室をご休憩で使わせてもらうことに。


 まぁ二時間ぐらいなので、ちょっと休んで写真撮って出ようか。


「お部屋のお風呂も使っていいみたいですよ? 三人で入ります? ふふ」


「うっわ、広くて綺麗だぞ風呂! 見ろよリュー、シャンプーとか良いやつ置いてるぞ!」


 鍵を開け、部屋に入った途端ミナトとカレンがお風呂チェック。


 え、風呂入るの?


 つかホテルの部屋入って最初に見るのって、窓からの景色とかじゃあないの。いきなり風呂見るのか。


「お風呂はホラ、二人とも髪乾かすの時間かかるだろ? 二時間しかないし、ベッドだけ利用させてもらって写真撮って出よ……」


「なるほど……! お風呂の時間すら惜しいから、早く二人ともベッドに来い、と……! リュー君が力強い発言を……!」


「そういや二時間だもんな。まずはヤることヤって、性癖写真撮られてからか。しゃーねぇ、風呂は諦めっか」


 ミナトとカレンがお風呂を諦め、ベッドに座り、着ていた服を脱ぎ始め……って何してんだ二人とも!


 って、あ、そうか、二人とも良い服を着ているから、休もうにも脱がないとシワとか出来ちゃうのか……。


 しまった、俺の配慮不足だ。


 にしてもいくら幼馴染みでも、男の俺がいるのに、いきなり脱がないで……


「いや、ちょ待て……! 一回俺、部屋出るから!」


「ダメですよ逃げちゃ、ね、リュー君。ここから先はリュー君が脱がせてくださいね」


「早く脱げよリュー。時間ねぇんだろ」


 俺が真っ赤な顔で脱ぎ始めた二人を止めるも、すでに手遅れ。


 下着姿になったミナトとカレンが、ぴったり俺にくっついてくる。


 ホォオオオ……ミナトさん、黒い下着ですか……やっば、大人なエロさが出ている。


 カレンは水色の下着。カレンは足とお腹が超綺麗……って、そうじゃなくて、向こうにホテルで貸し出している部屋着があるので、早くそっち着て下さいって!



「うっわミナト、完全に誘う用のやつだろ、それ」


「あらカレンこそ。いつもは色気無しのスポーツタイプなのに、今日は随分とオシャレな下着じゃないですか。ふふ」



 二人がお互いの下着の感想を言い合うが、肌面積がすごすぎて直視出来ねぇ……!



















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