第20話 GWは三人で映画館に行こう
「GWか……」
高校に入学して一か月が経つと訪れる神。
そう、連休様である。
祝日法というのが改正され、連休が伸びるケースが多くなった。
ゴールデンウイークというのは和製英語で、確か元々はどこかの映画会社が集客のために設けたとか何とか。
映画か。今は何をやっているのかな。
明日からのゴールデンウイークに向けて、朝の授業前のうちに調べておくか。
「やはりアニメ映画が多いか」
携帯端末で調べてみるが、やはり子供の日絡みでアニメ映画が多い。
俺自身もアニメ映画が好きだし、中学のときは妹のリンが小学生だったので、よく魔法少女物の映画に同伴した。
子供の頃にも親に連れて行ってもらっていたし、中学の時は三年連続行っていたので、この期間は映画に行くもの、と俺の身体が言っている。
しかしリンは今年から中学生。はたして映画に行くのだろうか。
こないだのカラオケ大会では、いまだに魔法少女物の歌を好んでいたが……さすがに映画は卒業したのだろうか。
リンも携帯端末を持っているし、一応聞いてみよう。
「あれ、どうしたのですかリュー君。もしかして映画に誘ってくれるとかですか? ふふ、いいですよ」
文章を送信し、引き続き近くの商業施設でやっている映画の検索をしていたら、黒髪お嬢様ミナトが俺の携帯端末を覗き込んできた。
「おっと、おはようミナト。ああ、これはリンと見る映画の……ってあれ、リンは今年は友人たちと行くのか」
瞬時に返信が来て、リンは中学校の友人たちと映画に行くらしい。
そっか……何か寂しいけど、リンも中学生だしな。
「……ふふ、ふふふふ」
ってことは今年はソロで映画か。さてどうしたものか、と思っていたら、じーっと俺を見てくるミナトの視線の圧がすごいんですけど。
「ミ、ミナトはゴールデンウイーク……ど、どうなのかな。よければ俺と映画に……」
「まぁ! リュー君から誘ってくれるなんて嬉しい! もちろん行きますよ、ふふ」
なんか誘わないと恐ろしい未来が待っているようなビジョンが浮かんだので、誘ってみる。食い気味に乗ってきたが、いいのかよ。
「やったぜ! 連休はリューとデートか! アルバイトもあるし、休みなのにほとんど毎日一緒だな、あはは」
右側から元気な声が聞こえ、俺の肩をガッシリ掴んでくる。ああ、金髪ヤンキー娘のカレンか……。いつのまに来ていたのか。
「カ、カレンもいいのか? 休みなのに……」
「ああ? 休みだから一緒にいるんだろ? 何言ってんだリュー」
せっかくのお休みなのに、俺に付き合ってもらって大丈夫なのか聞いてみたが、なぜか真顔で怒られた。おかしいな……。
連休中もミナトとカレン、幼馴染みのハイスペック美女二人がうちの喫茶店のアルバイトに来てくれるのだが、連休初日の明日はお休み。
プライベートな時間を確保出来る貴重な日だと思うが、二人ともたまたま予定が無かったのか。
翌日、ゴールデンウイークがスタート。
天気は快晴で暑い。朝から二十五度越え、夏日って感じか。
ミナトとカレンは俺の家から近いので、午前九時に俺の家の前で集合となっている。
「お待たせいたしました。リュー君と映画デートとか、もう朝から興奮してしまって……!」
部屋で準備を進めていたら、まだ八時半だってのに家の喫茶店の前に見慣れた黒塗り高級車が止められ、テンション高めの女性が飛び出してきた。
明るめのグリーンのワンピースに、大きめの帽子をかぶった黒髪お嬢様ミナトが参上。
まだ集合時間の三十分も前なのだが……まぁ外で待たせるのも悪いし、カレンが来るまで開店前の喫茶店で座っていてもらうか。
デート? あれ、あまり深く考えずに誘ってしまったが、もしかしてこれって高校生の初々しい男女がよくやる映画館デートってやつなのか?
そういや昨日、カレンもデートがとか言っていたな。
「来たぜぇリュー! 映画館デートってあれらしいぞ、ずっと手をつなぐのがルールらしいぜ!」
と思っていたら、金髪ヤンキー娘カレンも参上。
映画の時は手をつなぐ……? 初耳だが?
しかし二人とも息が合うというか、三十分前行動ってすごすぎる。
カレンは黒いハーフパンツに大きめの白いシャツ、頭には黒いキャップを装備。
お二人とも、ほんのり化粧をしている。うん、学校のときとは明らかに違う、ちょっと大人な雰囲気が出ている。
見た目が良くて普段から目立つ存在なのに、プラスアルファが加わると二人の放つオーラが一般人超え。
毎度思うが、こんなハイスペック美女二人の横に一般人以下の俺がいてもいいのだろうか。
「では参りましょう! 今日はダブル映画デートです! ふふふ」
黒髪お嬢様ミナトがテンション高く、始まりを宣言。
ダブルデート? それって俺のイメージでは男2、女2とかでやるものだが?
はたして男が俺一人でダブルデートは成立するのか。
というか、これはデートなのか、まぁ深く考えるのはよそう。楽しめればいいのだ。
ミナトのご自慢の黒塗り高級車で送ってもらえ、運転手であるイケメンハーフ、ジェイロンさんにお礼を言う。なんか申し訳ないな。ジェイロンさんにも予定があったかもしれないのに。
近郊の大型商業施設に着き、車を降りる。
ここには映画館も併設されいて、買い物も出来るし遊べるしと、地元の人にはありがたい場所。
「ふふ、左は私が」
「ダブルデートだしな、右は私だ」
商業施設の大きさを確認していたら、ミナトが左、カレンが右と、同時に俺の手を握ってくる。
え、マジで手つなぎ状態で動くの。
うわわ、二人からそれぞれ甘い香りがするし、その、手が柔らかい……。
しかも左右、二人同時に味わえるとか幸せ過ぎる。
周囲の男たちから結構強めの視線が来ているが、すまねぇ、俺は今日、両手に幼馴染みのハイスペック美女二人という幸せ時間を楽しませてもらうぞ。
「ああ、楽しい……リュー君と映画デート! こういうの憧れていました!」
「見ろよリュー! 春物の服半額やってるぞ!」
商業施設に入ると、ミナトは俺のちょっと後ろを歩き、カレンがグイグイ前に出て進む。
あれ、三人並んで、とかじゃないんだ。
おかしいな、買い物に来た女性カレンに、逃げられないように引っ張られている断れずに付き合わされた男女二人、みたいな感じになっているが……?
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