第27話

葛葉視点


私の彼氏は賀茂忠明という同級生だ。

彼は子供の頃から少し奥手で、人付き合いが苦手なところがあるから、私が色々と教えてあげたり、色んなところに連れ出してあげないと駄目な男の子だった。


忠明は恋愛に関しては特にクソザコナメクジなんだよね。


告白も私が色々根回しをして、ようやく彼から言わしたからね。


やっぱり、告白ってものは、女性からよりも男性からって方が定番だし、私も忠明から告白されることを夢見ていたからね。


でも、最近、忠明は私の妹である玉藻と急に仲が良くなってきている。


これは、私と酒田との付き合う振りをしてしまったから、忠明は私に振られたと勘違いをして、その失恋(忠明の勘違いなのだけど)の痛みを、少しでも私に似た玉藻と付き合うことで、癒そうとしているのだと思う。


玉藻もそんな忠明を見て、本気になったのかわからないけど、忠明の彼女になろうとして、必死に忠明に近づいてきているのだろう。


忠明は私の彼氏なんだけどな。

まぁ、良いわ。

玉藻には、私との格の違いを見せるために、忠明の取り合い(ほんとは私の彼氏なんだけど)という形にして分からせてあげよう。


〜〜〜〜〜


その翌日、いつもなら休日は部屋で本を読んでいるか、図書館に出かけるはずの玉藻が朝から運動をしようとして準備している。


玉藻は、新しいことを始めようとしたときは、前もって念入りに調べる性格だ。


今回も、少し前からランニングやランニングシューズのことを父さんや母さんに尋ねたり、こっそりランニングウェアを買っていたので、とてもわかりやすかった。


最近、ダイエットでもしようと思っているのだろうか?


なるほどね。少しでも綺麗になって忠明の気を引こうとしているんだね。


ちょうど良い。

私も高校の部活を引退してから、ランニングをサボっていて身体が鈍っていたから、一緒に走ろうかな?


〜〜〜〜〜〜


今日は運が良い日だった。


私が玉藻と一緒に走ろうとしていたら、忠明達が家族で走っているところに遭遇したんだ。


玉藻1人で走らせたら、忠明との仲を進展させてしまうところだった。


それよりも気になるのは、お義母さんや義妹の少しだけ冷淡な態度をしていることだ。


これは私が酒田の奴と付き合う振りをして、忠明を振ったと思われているのだろう。


忠明もそうだけど、彼の一家は、全員思い込みの激しい性格だ。


まぁ、忠明を嫉妬させることに関しては、酒田の奴の提案も、満更ではなかった。


だからと言って、忠明や忠明の家族が冷たい態度になってしまったから酒田の奴は許さないけどね。


嫉妬した結果、忠明は昨日、玉藻とデートみたいなことをしてしまっている。


忠明にも、私の彼氏っていうことを分からせていかなければならないわね。


それはそうと、最近、忠明が私を見る目が少しだけおかしい。

おかしいのは目線なのだけど・・・。


私は、忠明よりも背は低い。

しかし、彼の目線をみると、私の顔を見ているようには見えない。

もう少し下を見ているような感じ。


・・・。

顔ではない。

もう少し低いところ・・・か。


やっぱり、忠明も男の子だなぁ。

彼は恋愛関係には奥手だったけど、私の身体が気になってきたのかしら。


私の胸は、同年代の私の周りにいる女と比べたら、少しだけ・・・ほんの少しだけど、小さい・・・、かもしれない。


だけど!!

忠明の目線からすると、彼はそんなに大きな胸は好きじゃないと思う。

だって、最近の私を見るときの目は、いつも私の胸辺りを見ているような気がするから!

・・・。

うん。多分、そうだと思う。

まぁ胸の大きさの話はいいわ。

・・・忠明も私のことを気になってきたみたいだし、ちょっとは大きく見えるようにしてみようかな。


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