第22話 裏設定だった話 見えぬ怪異のバラッド


〜〜WARNING〜〜

この話の冒頭から、嫌悪感を与える名称を持つ生物と似た名前のキャラクターが登場します。

精神的負担に弱い方、火星で進化したその生物に自分や親、兄弟、親戚等が危害にあった方は、黙読、音読などに関わらず読み進めることをオススメしません。

このまま、別の方の作品を読むことを推奨します。


また、この警告に反して、これ以上読み進め、身体的、精神的に負担を感じても、当方は一切の責任を持つことはできませんが、その傷ついた心に寄り添って、バイクでのツーリングや夕陽が射す河川敷での殴りあいなどを一緒に行うことはできるような気がします。


〜〜〜〜〜〜


我の名はゴキ(後鬼)いや、そのような嫌悪溢れる目付きは止めてもらおう。


またの名を義玄もしくは義賢とも言うから、その名でも我を呼んでも良いぞ。


我はのう。

おのこの鬼ではなく、おなごの鬼じゃよ珍しいじゃろ?


正しくは鬼じゃったと言った方が良いかのう?まぁ、我の身は鬼ではなくなったのじゃ。というのも、我はな。


仕えていた主と山に入って、夫の前鬼と一緒に修行しておったのじゃが、

ある時、主から


「おぬし達はこれだけ修行したから、もう鬼ではない。里に降りて人間として暮らしなさい。」


と言われたのじゃ。

さらにな。


「里に降りたら人を助けなさい。」


と役目を与えられたので、そこから人となり、同じ人を助けておったのじゃよ。


しかしな、こうして話をしている我は違うぞ。人ではないぞ。


おぬしらも、いきなり別の存在になれと言われて

「はい!」

などと喜んで別の存在に成れる者はそんなにおらんじゃろ?


我もその気持ちじゃった。

夫の前鬼はそうでもなかったみたいじゃがな。


やはり、こういう時はおのこの方が思い切りが良いのかのう?


我の中には鬼のままでいたい我と、人となりて生きたい我がおったのじゃよ。


おぬしらは「しゅれーでぃんがーの猫」とやらを知っておるかの?


我も詳しく知らんのじゃがな。


何かの拍子で毒が出る箱の中に唐猫を入れておいての。

しばらく暇をおいて、箱を覗くと唐猫は死んでおるか生きておるかわかるであろう?


我はこの話を実行した輩はなんと残酷な奴だと思ったがのう。


後で聞いたらこれは思考実験とやらで、実際にはしとらんと聞いてのう。

安心したもんじゃ。

それはそうと話の続きじゃな。


そう、箱を開けて、中を見るまでは、唐猫は生きておって死んでおる状態らしいのぉ。


そしてのう。えすえふ作家とやらが考えた中に

「ぱられるわーるど」

とやらがあっての。


このしゅれーでぃんがーの猫の話でぱられるわーるどがでてくると考えるられるらしい。


唐猫が入っている箱を開けたとき、唐猫が生きている世界と死んでいる世界に別れるという考え方らしいのぅ。



主から、

「人となりて、人を助けよ」

と言われた我は、鬼であって、鬼ではない状態であったのかのう。


そして、鬼ではなくて人として生きると決めたときに、気付いたら、人となった我と、鬼のままの我がいたわけじゃ。


しかし、ぱられるわーるどとやらのように世界が別れず、我が別れたみたいじゃった。


一つの世界で我は、人なった我が実体を持ち、鬼の我は実体を持たず、生霊のような存在となっておった。


夫や子、わが主にも気づかれず、夫や子にも触れず、夫や子供に話かけても答えてもらえず皆の周りを彷徨っておったのじゃ。


まぁ、彼らには人となった我がおったからのう。

気づかずにいたのはしょうがないかもしれないが。

おかしなことに人となった我自身も鬼の我には気づいておらんかった。


腹を痛めて産み落とした我が子に気づいてもらえないのは、かなりやるせない気持ちになったから、子にはずっとついておったわ。


このまま、子や子孫を護る生霊としていこうと思った。


人となった夫や子や我自身も死に、その子孫を長き間、見ておったのじゃ。


しかし、ある時、我が子に似た子を見かけたのじゃよ。

あれは、子孫が子を産んだときに同じ産屋、今は産院とか言うんじゃったか?

そこにおったんじゃ。

我が愛し子が!

愛し子は赤子だった。

たまたまかもしれんが、我の子が赤子だったとき似たよく似ておった。


その時にのう、目があったんじゃよ。人には見えぬはずの我がのう。

まぁ、このことは今では勘違いだとわかっているのじゃが、あの時は我が見えると思ったおったのじゃよ。


初めて愛し子を見た時、まだそのよく見えぬはずの目で、我を見て笑ってくれたのじゃよ。


我は子孫が一番大事だと思っておったが、愛し子はのう。

我か愛し子自身が死ぬその時まで、護ると誓ったのじゃよ。


その愛し子がのぅ。

恋仲のおなごに悪辣な偽りを告げられようとしておった。


我はその時、確かに未来が見えたのじゃ。

その偽りで、心が壊れる愛し子を

見てしもうた。


我は、なりふり構わず、久方ぶりに鬼の力を、術を使った。


実体のない我は、この世界に我は干渉できない。


我の術は虚しく消える。

そうわかっておったのじゃがの。


我は何もせずに、愛し子が壊れるさまを見ておるだけはできなんだのよ。


しかし、愛し子への思いが通じたのか。

我の術は完成したのじゃ。


【茨木家のおなごが、愛し子の心を惑わさずにすむよう。愛し子の心を強くし、茨木家のおなごにまた惑わされることのないよう、その身を変えて見せよ】


惜しむらくは、茨木家のおなごに直接、術をかけられれば、おなごの身体を実際に妖かしや獣に姿を変えてやろうと思ったのじゃが。


我と茨木家のおなごには愛し子を通してしか繋がりはないから、干渉はできなんだ。

愛し子とは生まれた時からの繋がりがあったからのう。

愛し子自身に術をかけるしか、手がなかった。

そう、愛し子の目の見え方を変え、その心を強くするしかできなんだ。


でものう。

我も久方ぶりの術じゃし、急いておったから、言霊をよく選ばす術をつこうてしもうた。


我は「茨木家のおなご」は、愛し子と恋仲だったおなごだけではのうて、妹や母親もおったのを忘れておったのじゃ。


愛し子には悪いことをしてしもうた。

我の術で、「茨木家のおなご」は全員、妖かしに見えてしまうかもしれぬ。


我は意識の大半を、愛し子と恋仲だった「茨木家のおなご」に向けておったから、

愛し子の目には、あやつに近い妹や母親も同様に妖かしに見えるかもしれぬ。


しかし、全く関係のない、「茨木」という同姓だけのおなごなら普通の人に見えると思うのじゃよ。

多分・・・。

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