第32話


俺が一階に降りると、山ン本五郎左衛門の見た目をしている妲己さんが自分の顔にメイクをしつつ、晴と俺の母親に説明をしている。


俺からすれば、おじさんがメイクをしているのを女子高生と主婦が真剣に見つつ、解説を聞いているというかなりシュールな光景だ。


俺は男性がメイクをするのが、悪いと言っているわけではないが、やはり耐性がついていないとギョッとしてしまうのはしょうがないと思う。


俺はそんなことを考えながらも、ポーカーフェイスをしていたので、ぬっぺっぽうの葛葉からは、


「うちの母さんが美人だからってじっと見つめないでよ。」


とか、毛羽毛現の玉藻ちゃんからも


「忠明兄さんは、ナチュラルメイクじゃなくて、はっきりした感じのメイクの方が良いんですか?」


なんて言われたけど、俺は、


「自分の顔の特性をよく把握して、どのような見せ方をするのかということを突き詰めて考えるのはすごいなと思っていただけだよ。」


なんて面白くもない返しをしてしまった。


「そんなことよりも、葛葉さん?

君は俺の部屋に無断で入ってベッドに隠れていたんですが、一言もないのかな?」


その言葉を聞いた玉藻ちゃん(毛羽毛現)の頭の毛がピンッと立ったんですが?

あれ?

前もこんなことがあったような気がしたけど、妖気を感じたのかな?


そのうち、毛が針みたいになって飛ばすようにならないよね?


「姉さん!あれほど言っていたのに忠明兄さんの部屋に入ったんですか!うら・・・じゃなくて、ダメだって言ったじゃないですか!」


山ン本五郎左衛門が気まずそうな顔になり、母親と晴は、今にも怒り出しそうな顔をしているが、メイクを教えてもらっている手前、何も言わずに黙っている。


ぬっぺっぽうの葛葉は相変わらず表情が分からないけど、とても落ち着いた態度で、


「最近、忠明が冷たいからさ。忠明成分を補充していただけで、別に変なことはしていないわよ。」


「いや、そうなことを言ってその後ろに隠した物は何ですか!?」


毛羽毛現が髪の毛を触手のように伸ばし、ぬっぺっぽうの後ろから、グレーの布状の物を取り出す。


「あぁ!私の宝物が!」


「お前の宝物じゃなくて、俺のボクサーブリーフの下着じゃねえか!!」


「えぇ!忠明兄さんのした、した、下着ですか!?」

毛羽毛現がびっくりして触手から俺の下着が落ちる。


まぁ、普通、JKが男の下着を持ってしまうとそうなるよね。


「甘いな!玉藻よ!」


ぬっぺっぽうはスライディングをして俺の下着をキャッチしようとする。・・・が、俺がぬっぺっぽうの短い肉の塊(手だろうな)が掴む前に自分の下着を取る。


「いや、何が恥ずかしくて自分の下着を妹の友人さらにその子の母親まで見られないといけないんだ?」


葛葉は


「まぁ気にしてもしょうがないじゃない。大丈夫!我が家にも父さんがいるからね。男の下着なんて飽きるほど見ているわよ。」


などと言っているが、後ろから山ン本五郎左衛門(妲己さん)が女性とは思えないほど、鋭いパンチでぶん殴っていた。


その横で玉藻ちゃんは放心状態で


「忠明兄さんの下着触っちゃった。」


なんて呟いている。

その横で、晴が


「大丈夫よ!玉ちゃん。何だったら何枚か持って帰る?」


いやいや、妹よ。

普通、兄の下着はアイドルのポスターなんかと違って、人にプレゼントするものではないんだよ。


俺はため息をつきながら、自分の下着をもと場所に戻すために部屋に向かう。

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