第28話

平日の朝、いつもどおりの時間に俺は目を覚ますと欠伸をして、洗面台に向かい、洗面と歯磨きをする。


今日は、確か担当教授が学会に参加するから午前中の講義は休講という案内があったな。


今日は両親ともに朝早くから仕事があるとか言っていたので、出勤済みだし、妹は起きてはいたみたいだが、部屋で何かしていた。


まぁ、女子高生だからな。

メイクやなんかあるんだろう。


朝ご飯については、今日の当番の父親が作ってくれていたので、温め直すだけで良い。


俺はいつもとは違い、のんびりとと身支度を行っていると、インターホンが鳴る。


「誰だ?こんな朝から?」


俺がインターホンを確認しようとすると、妹の部屋から


「アニキ〜、多分、玉ちゃんだと思うから出て〜。準備するから、居間で待ってもらって良いかな?お願いしま〜す」


妹の晴が寝起きの声で俺にお願いをする。


「まったく、せっかく来てくれたんだから、早く準備をして降りてこいよ。」


俺は晴にそう返し、玄関に向かい、玄関のドアを開ける。


するとそこには、毛羽毛現が立っていた。相変わらずの毛むくじゃらだが、今日は人間で言うと頭の部分の毛にはヘアピンやらヘアゴムなんかがついてはいるので、おしゃれをしているのだろう。服は見えないけど、ヘアピンやらは見えるのは何でだろう?


「おはよう。わざわざ晴を迎えに来てくれてありがとう。」


「おはようございます。忠明兄さん。」



玉藻ちゃん(毛羽毛現)の表情はわからないが、その声の調子から喜んでいると思う。


「そのヘアピン、よく似合っているね。可愛いらしいね。申し訳ないけど、晴はまだ準備ができていないから、玉藻ちゃん、居間で待ってもらっても良いかな?もし間に合わないようだったら先に行ってもらっていいけど。」


俺がそういうと、玉藻ちゃん(毛羽毛現)は嬉しそうな声で


「大丈夫です!少し早くきたので、居間で待たせてもらいます!それと・・・、ヘアピン褒めていただいてありがとうございます。」


と言ってくれたので、玉藻ちゃん(毛羽毛現)を居間に案内する。


「ごめん、晴はまだ部屋から出て来ていなくて、アイツ、まだ朝ご飯も食べていないから。」


すると、玉藻ちゃん(毛羽毛現)は


「大丈夫です。今日は晴ちゃんと私は今人気のパン屋さんで、朝早くからで並んで買って、朝食にしようかと話していたんです。それで今日はいつもより早く来たんですよ。」


「えっ!そうなの?」


実をいうと、玉藻ちゃんは学校にまっすぐ行くなら我が家は通り道ではない。

普段もわざわざ彼女が遠回りをして、晴を迎えに来てくれているのだ。


今回も件のパン屋は学校への通り道にあるはずなので、彼女にとっては遠回りになるわけだ。


玉藻ちゃんが数学の問題の点Pだとしたら、学生が頭を抱えるような動きに成るのにも関わらず、玉藻ちゃんは、晴のために気を使ってくれている。


「わざわざ遠くなるのにありがとう。」


俺は玉藻ちゃんへ椅子に座るよう促し、冷蔵庫にある麦茶を出す。


「麦茶ありがとうございます。」


「しかし、晴のやつそんなことを一言も言っていなかったな。」


父親が当番だったから、色々凝った朝食を作っていたはずだ。


仕方ない。弁当にできるようなら、俺が弁当箱に詰めて昼食として食べるか。

確か、俺用に保温機能があるスープジャーがついている弁当箱(この場合はランチボックスとか言うのだろうか?)があったはずだ。



俺がそんなことを考えていると、2階からバタバタと足音が聞こえてきた。


「いや〜、玉ちゃんごめんね。今日は空手部の朝練もないし、パン屋に行くの楽しみにしていたら寝るのが遅くなって起きるのも遅くなっちゃった。」


「おいおい、楽しみなんだったら早く起きてパン屋の前で待ち合わせしておけば良いだろ?玉藻ちゃんはわざわざ遠回りして来てくれているんだからな。」


俺がそう小言を言っても晴は何処吹く風で、ニヤニヤしながら


「まぁまぁ、玉ちゃんにも色々あるんだよ。」


俺が玉藻ちゃん(毛羽毛現)の方を向くと、毛羽毛現の俯いていて何やらモジモジしていて表情は伺えない(もっとも顔を上げていても表情は伺えないが)


「それはそうと、アニキは大学は今日は無いの?」


「俺か?俺は今日は朝からの講義は休講だから、少し遅めに出発だな。」


俺がそういうと、晴は良いことを思いついたみたいで、


「じゃあさ。アニキも一緒にパン屋に行かない?」


「おいおい、父さんが朝食を作ってくれいただろう。」


「ランチボックスに詰めて昼食にするよ。ウチはいつもは学食だから、たまには弁当もいいし、アニキもそうすればいいんじゃない。」


元々、晴の分は、俺の昼食用にしようと思っていたが、晴が自身でしてくれるのなら問題ないな。


「分かった。じゃあ、今から晴の分の朝食をランチボックスに詰めるから、少し待ってくれ。」


俺がそういってキッチンに向かうと、後ろから


「やったね。玉ちゃん!」

「うん!」

と言う、晴の声とハイタッチの音、そして嬉しそうな玉藻ちゃんの声が聞こえてきた。

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