第2話
俺はファミレスから、家に帰ると家にいた母親や妹の晴(はる)に葛葉が別の人を好きになったので、別れたことを伝えた。
葛葉とは家族ぐるみで付き合っていて、よくお互いの家に遊びに行っていたので、関係が終わったことをちゃんと伝えないとズルズルと顔をあわせる羽目になってしまう。
元カノとしての葛葉とも、妖怪化(?)してぬっぺっぽうの葛葉とも顔を合わせたくはないので、気まずい関係を強調して顔を会わせないようにしよう。
〜〜〜〜〜
「まずいことになった。忠明に嫌われてしまった。」
私はファミレスの席に座ったまま、頭を掻きむしり、この事態の解決策を考える。
「嫌われたというよりも、別れを了承され・・・」
「何か言った?!」
「いや、何でもないよ。」
気まずい雰囲気の中、目の前にいる酒田は帰りたそうにしているが、気が弱いのか、帰ることを言い出せないみたいだ。
まったく、私としては目障りだから、目の前から消えてもらいたいんだけどね。
綱子もなんでこんなやつと付き合っているのかな?
そんなことはどうでもいい!
忠明ともう一度話をして、さっきのは間違えって言って元の関係に戻らないと!
このことがあの子にバレたら!
私が忠明と付き合っているときでも、忠明に色目を使っていたから・・・。
このチャンスを逃さず、彼女になろうとするに違いない。
忠明の彼女にあの子がなってしまったら・・・。
私の実の妹とはいえ、きっと私のことを死ぬまでバカにしてくる!
あの子に決定的な差を見せつけるために、忠明と恋人関係を進めようとしたばかりにこんなことになってしまった。
忠明に嫌われたくないから止めていたはずの親指の爪を噛む癖が再び出ていたことも気付かないくらい必死に私は打開策を考えていた。
妹の玉藻(たまも)だけには忠明は渡さない。
〜~〜~〜
私は実の姉である葛葉が馬鹿なことを知っている。
小学生の頃、姉は私との能力の差があることを自覚したのはいいが、中学生の頃には、どうしても埋まらない私との能力の差から、私のことを嫌い始めた。
そんなことは私は気にしなかったのだけど。
今度は私が良いなと思っていた忠明兄さんの周りをチョロチョロとうろつき始めた。
そして、私が忠明兄さんことを好きだと自覚した時には、もう遅くて、姉はその唯一の取り柄である容姿の良さだけで、忠明兄さんの彼女の座に収まっていた。
忠明兄さんは少し鈍感なところがあるから、あのバカにみたいに直接的にいかないと上手く伝わらないと気付いた時にはもう遅かった。
あのときのあのバカの勝ち誇った顔を思い出すと今でもイライラする。
そのあとも彼女面して、この私にマウントを取ってきやがって!
しかし、それも今日までだ!
さっき忠明兄さんの実の妹であり、私の友達で、同じクラスの賀茂晴(かも はる)から
「アニキを振るなんて玉藻のアネキってウチに殺されたいの?」
って連絡がきたから、馬鹿な姉はまた本領発揮しておかしなことをしたんだろう。
しかし、これはチャンスだ。
「姉がバカなことをしてごめんね。忠明さんに謝りたいから、今から会いに行くって晴から伝えて。」
そう晴に返信をした後、晴から、忠明兄さんは今日はもうずっと家にいるとの返事を読んだら、私は
思わず笑みがこぼれた。
バカな姉よ。
将を射んと欲すれば先ず馬を射よだよね。外堀を埋めてチャンスを待てば、ドンデン返しもあるのよ。
さあ急いで家に帰って、忠明さん好みの服に着替えなくては!
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