第3話
「アニキ〜。ゲ・・・いや、葛葉さんの妹の玉藻から姉のことで謝りたいって。玉藻はいい奴だからさ〜。会ってやってよ~。」
などと、言いながら、妹の晴(はる)が部屋に入ってきた。絶対、ゲスって言おうとしたよね?
それよりも、普通ノックぐらいするよね!
「え〜。俺は振られたわけだし。しかも、酒田と付き合い始めたからな。葛葉のことは、もうどうでもいいんだよね。それよりも、妹がノックをせずに部屋に踏み込んでくるの方が気になるんだけどね。」
酒田と付き合い始めたよりも、妖怪「ぬっぺっぽう」になってしまったのが気になるけど。
しかし、酒田やファミレスの他のお客さん達はまったく気付いていなかったからな。
俺にしか見えないみたいだから、葛葉が妖怪になりました。なんて言っても、信じられない可能性が高い。
俺が変な目で見られ、病院での検診を進められるのがオチだろう。
「アニキ、結構ドライだな?あんなに仲良かったのに、引きずっていないの??」
部屋のノックの件は全く無視して、
晴が意外そうな顔をして問い返す。
「まぁな。大好きだった分、反動も大きいのかもな。でも、玉藻ちゃんと会うのは問題ないよ。今日はもうどこにもいかないし。」
「わかった。玉藻にはそう伝えておく。多分、夕方くらいには来ると思う。」
晴が部屋を出て行くのを見届けると、俺は疲れたので、夕方まで寝ることにした。
〜〜〜〜〜
完璧だ・・・。
服、化粧、表情の作り方まで忠明兄さんの好みを計算つくし、仕上げた私は完璧な忠明兄さん好みの外見をしている。
「どうしたの?玉藻、夕方からそんなに気合を入れた格好をして?
」
母親が普段しない私の行動にびっくりをして問いかけてくるが、私は曖昧に答える。
忠明兄さんの家族と私の家族はとても仲がよくて、両親は愚かな姉と忠明兄さんが付き合っていることも知っているので、下手なことを言うわけにはいかない。
しかし、さっき晴から忠明兄さんが振られたことを言ってきたってことは、忠明兄さんの家族は忠明兄さんが振られたことを知っているはずだ。
ここが分水嶺だね。愚かな姉よ。
私は忠明兄さんとの仲を進展させるために、今日、勝負に出る。
〜〜〜〜〜
「アニキ〜、玉藻がきたよ」
俺は晴の声で目を覚ます。
「いや、またお前、ノックしていないだろ。」
「いや、寝てたんだから、ノックしても返事がないかもしれないじゃない。それよりも、玉藻珍しく可愛い格好しているから褒めてやりなよ。」
晴がニヤニヤして俺をベッドから引っ張り出そうとする。
晴は昔から空手をやっているので、俺よりも力が強いので、俺は無理矢理ベッドから引きずり出される。
「玉藻はまだ玄関にいるから、早く行ってやりなよ。」
「えー。なんでリビングに入れていないんだよ。」
「玉藻が先にアニキに謝りたいって言ったからね~。」
俺は急いで玄関に向かい玉藻ちゃんに声をかける。
「わざわざごめんね。別にあやま・・・」
玄関にいたのはいつも見ていた黒髪の美少女の玉藻ちゃんではなく、黒い毛玉?とか長い毛に覆われた何かと表現したらいいものだった。
さあ、ここで正気度ロールだ。
俺は昔やったTRPGでゲームマスターをやっていた先輩がウキウキしながらがそんな台詞を言っていた事を思い出した。
そういえば、この先輩、よくキャラクターを発狂させていたよな〜。
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