第14話

相変わらず、俺は自分の目もしくは脳が治らないままだ。

俺以外の人は葛葉を普通の女子だと見えているみたいだからな。

やはり俺の目か脳がおかしいのか?


まぁ、もしかしたら、葛葉やその家族が本当に妖怪かもしれないがな。


俺はそんなことを考えながら、ぬっぺっぽうの葛葉を避けたり、はぐらかしたりして、金曜日まで過ごした。

元親友の酒田とその彼女の渡辺はあの月曜の学食での出来事以外、こちらを遠巻きに見るぐらいで、直接の接触はなかった。

まぁ、話をしてきても無視をするけどな。

酒田も渡辺だけではなく、葛葉も引き取れよな。


葛葉には困ったものだ。

俺のことはもう気にしなくて良いのにな。

葛葉が妖怪に見えるのもそうだが、ファミレスの時のような態度をとる女となんて復縁する気はないと言っているのだが、葛葉はまったく聞いてくれない。


俺は憂鬱になりながら、家に帰る。

金曜日は、昼過ぎて講義が終わるので、家に帰ってゆっくりする予定だ。

葛葉は相変わらずだが、俺が無視をしていると勝手に横に歩くがとりあえずは静かなので敢えてそのままにしている。


大学に慣れたら、この時間帯にバイトでもしようかな。


俺は家に着くと、葛葉が入ってこないようにするために敢えて

「じゃあな。」

と声をかける。


これは、無視をしたままだったらそのまま家に入ってこようとしたことがあったので声をかけるようにしているのだ。


あのときは、偶然、妹が家にいたから、葛葉を家から引っ張り出してくれた。


いくら俺が葛葉を妖怪に見えていたとしても、腕を振り払うぐらいはできるが、女性を直接、家から引っ張り出すのは躊躇ってしまう。


今日も家に帰ると家には誰もいない(両親は共働きだし、妹は学校の後、空手道場に通っている。)ので。俺は家で少しゴロゴロしたら、その後は夕食の準備をするつもりだ。


我が家は基本、食事は母親が作るのだが、俺も大学生になったので、食事くらいは作れるようになりたいと思い、大学が早く終わった時は、母親が置いているレシピを参考に食事を作るのだ。


ここ最近は少しだけだが、腕も上がったらしく、家族には好評だ。


「ただいま〜アニキいる〜?」

食事の準備をしていると、妹が普段より、早く帰ってくる。


「お!今日は普段より早いな。いつも通りだと思っていたからまだ晩ごはんはできていないぞ。」


「いやいや、晩ごはんはまだ良いって。それよりアニキにお願いしたいことがあって早めに帰ってきたんだ。」


「それよりも、家に帰ってきたら、まずは手洗いとうがいな!」


「はーい!」

妹は素直に洗面所に向かう。


妹が改めて俺のところに来て


「アニキ、頼みたいことがあるんだ。」


「わかった。リビングで話そうか。」


そんなことを言ってきたので俺は食事準備の手を止めて、妹と一緒にリビングに向かう。


「で、頼みって何だ?」

妹は話しづらそうだったが意を決して話し始めた。


「実はさ、明日、玉藻と会ってくれないかな?というか、玉藻に勉強を教えてやってくれないか?」


何を言っているんだ。こいつは?

俺がびっくりして、何も言えずにいると。

妹が俺を拝んでくる。


「アニキが葛葉を嫌っているのは、勿論、わかっているよ!でもさ。玉藻はいいやつなんだよ。そしてさ。アニキと一緒の大学に行きたがっているんだ!頼む!このとおり!」


そう言って妹が頭を下げてくる。

妹には葛葉の件で色々お世話になっているしな。

玉藻ちゃんは毛羽毛現なこと以外は俺に悪影響はないし。

無碍に出来ないか。


「わかったよ。俺で良ければ玉藻ちゃんに勉強を教えるよ。でも、葛葉はだめだからな!うまくついてこないようにしてくれよ!」


俺がそう言って了承すると、妹が嬉しそうにお礼を言ってくる。


「ありがとう!お礼に今度、可愛い子を紹介するよ。」


「いらん、いらん。恋愛関係は葛葉の件で疲れた。しばらくは遠慮する。」


俺がしかめっ面をして断るが、

「まぁまぁ、楽しみにしておきなよ。」

などと、妹がニマニマして答える。


晴のヤツなんか企んでいるな。

まぁ、コイツは俺の嫌がることはあまりしないからな。

そんなことを考えながら、俺は夕食の準備に戻った。

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