第11話


月曜日の午前中、俺は大学でへと向かっている。

月曜日の朝は、多くの人が憂鬱なるらしい。

いわゆる(?)出勤や登校したくない病だな。


俺は登校することに関して憂鬱にはならない。

それは両親から


「良いか。大学や高校は会員制のトレーナー付きジムみたいなもんだ。ジムってやつは、会費を払ってトレーナーに指導してもらったり、自分が得た知識で、器具を使って自分の筋肉を発達させる。もちろん、これは自分がやらなければ、いくら会費を払っても、筋肉は発達しない。高校や大学だって一緒だ。いくら高い学費を払っても、自分から勉強しなくちゃ知識は身に付かない。」


と言われた後、俺と妹に向かって


「だから、忠明や晴がちゃんと勉強しないと、高い学費払っても、何にもならないからな。」


と父親からにっこり笑われたら、自分から大学に行きたいと希望して、学費まで出してもらった身としては、登校が憂鬱だなんて言えない。


しかし、俺は今日は朝からとても憂鬱だった。

それは、同じ講義をぬっぺっぽうな(?)葛葉が受けているからだ。


これは、俺と葛葉が高校から付き合っていて、大学入学してからも、一緒に講義を受けたいがために、同じ講義を取ったからだ。


俺は、葛葉に見つからないように普段より早めに家を出て、大学に向かう。


早めに出たせいか、教場内にはほとんど人がいない。

もちろん葛葉もいないみたいだ。


俺は安心して、葛葉と付き合っていたときには取らなかった一番前の席を取る。


俺は、一番前の席に座るのが好きなんだが、葛葉は講師や教授に質問されるのを嫌がって前の席に座るのが嫌いなんだ。


まぁ。一番前の席に座っていれば葛葉も近くに来ないだろうしな。


そうして、座って講義が始まるまで待っていたら、後ろから視線(妖気?)を感じて、後ろを見るとぬっぺっぽうがじっと俺を見ていた。


そして、俺が気付いたのが分かると、こちらに走ってきた。

ぬっぺっぽうが走るのを初めて見たけど、なんか短い足で歩くのを見ると、ペンギンが歩いているみたいで可愛らしいと思ってしまう。

まぁ、ぬっぺっぽうの見た目はペンギンほど可愛くはないがな。


「忠明!何で電話に出ないのよ!」


「いや、葛葉は酒田と付き合いはじめたから、俺と電話したら駄目だろ。」


「だから!あれは嘘だって言っているじゃない!」


「いや、俺の前で酒田とくっついていたし、嘘でもそんなことされると嫌だよ。」


ぬっぺっぽうはぐぬぬと言って黙る(実際にぐぬぬなんていう人(妖怪)を初めてみた)。


そんなこんなでぬっぺっぽうと話していると講義が始まる時間になったので、講師が入ってくる。


講師の姿を見たぬっぺっぽうは慌てて後ろの席に戻る。


「ふ〜。ようやく離れてくれたか。でも俺と復縁したいわりには後ろの席に座るんだな。」


俺はぬっぺっぽうが離れてくれた喜びとともに講義を真面目に受ける。

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