第6話
「今日は会ってもらった上に家まで送っていただきありがとうございます!お茶でも飲んで行きませんか?」
「いや、時間ももう遅いし、大丈夫だよ。家も近所だし、気にしなくても良いよ。じゃあ俺はこれで。」
玉藻(毛羽毛現)を玄関まで送り届けて、俺は軽く挨拶をして帰ろうとする。
やはり、元カノの葛葉(ぬっぺっぽう)と顔を合わせるのは色々気まずいからな。
なんて思っていたら、
「ただいま〜」
という声とともに、ぬっぺっぽうが入ってきた。
あの短い手でどうやってドアを開けたのかは不思議だ。(毛羽毛現は触手のように髪が伸びてドアを開けていた。)
「お姉ちゃん、帰ってきたの?」
「家だもの。当たり前じゃない。あら、忠明来ていたの?もしかして、私と酒田くんの関係を勘違いして、振られたと思って、彼女の私を置いて帰ってしまったのを謝りにきたのかな?」
ぬっぺっぽうの表情はわからないがどことなく偉そうな感じだ。
「えっ?勘違いも何も葛葉自身が、酒田が葛葉を愛しているって言っていたよね?ファミレスでも恋人みたいにくっついていたし。」
俺の言葉を聞いてもぬっぺっぽうは動じた様子はない。(というか表情が読めない。)
「ああ、あれ?あんな事を気にしていたの?あれは忠明を嫉妬させようと思ってやっただけだよ~。酒田君には綱子って彼女もいるし、綱子は私の親友なんだから、親友の彼氏を取るわけないじゃん。バカだな~、忠明は。」
それを聞いて、俺が口を開こうとする前に後ろから物凄い圧(妖気か?)が感じられた。
有名な妖怪アニメの主人公だったら、髪の毛が立ってしまうぐらいだ。
「何を言っているのかな?この馬鹿な姉は?忠明兄さん、ごめんなさい。こんなバカに付き合ってもらって。」
俺が後ろを振り向くと妖怪アニメの主人公以上に髪の毛が逆立っている毛羽毛現がいた。
「姉に対してバカとは何よ!」
「バカに対してバカと言って何が悪いのかしら!?」
ぬっぺっぽうが少し大きくなったように見える。怒りに比例して巨大化するのか?この妖怪は?!
ぬっぺっぽうが毛羽毛現に詰め寄り始めた隙にその横をすり抜ける。
「いや、例え誤解でも、俺は葛葉とは憑き合えないから!」
俺は慌てて葛葉の家を出ながらも、一言言っておく。
「あっ!忠明待ちなさい!」
「行かせるかぁ!」
閉めたドアの向こうから葛葉と玉藻の怒鳴り声が聞こえるけど、無視して走り出す。
ドアの向こうは妖怪大戦争が起きていてもおかしくない。
その様子が少し気になるが、巻き込まれるのは普通の人間としては勘弁してもらいたいので、俺は家まで走って逃げる。
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