海底神殿

 海へ海へとどんどん潜っていく僕とアンリ。

 しばらく潜り続けたのち、ようやくになって僕たちの目に一つの建物が飛び込んでくる。


「……全然見えないな」


 とはいえ、ここは既に遥か海の底である深海である。

 暗すぎて建物のシルエットが見えているだけだった。

 というか、深海ってやっぱり暗すぎなっ!?ほとんど何も見えない!素で視力があがり、暗視もある程度ついている僕でもほとんど何も見えない。


「……そうだね」


「ちょっとばかり照らすか」


 僕は結界魔法を用いて四つの壁を作ることで四角い空間を作成。

 その四角の内部にある海水をすべて蒸発させた後、光魔法を発動させる。

 これで光源ブロックの完成だ。

 深海の海の中だと妙に空気中における魔力の通りが悪いため、ほぼ無意識下で維持を続けている光源のための魔法であれば丁寧に光源を作った方が案外楽だということがあるのだ。


「おぉ……結構すごいな」


 これまではシルエットしか見えていなかった大悪魔が封印されているという海底神殿。

 それが光源によって照らされた結果、見えるようになったその神殿はかなりの威容を誇る巨大な建造物であった。

 

「結構雰囲気あるな」


 なかなかな建物と言えるだろう。

 うん、本当に見た目がかなり良い。


「……器用な、ことをするのね」


「ん?まぁね」


 自分が目の前にある海底神殿を前に感嘆している中で、それとは別に僕の光源の魔法を見て驚いていたアンリの言葉へと雑に答える。


「そんなことより早く行こうか……ちょっと楽しみになってきた」


 大悪魔と言えばなんか面倒事になりそうな雰囲気があってちょっと気が進まなかったのだが、そんな気持ちを目の前にある海底神殿の立派さは消し飛ばしてくれた。

 なんかこう……前世だったら世界遺産に登録されていそうなくらい立派な建物だ。

 深海にあるくせして、水圧に潰されずその形をしっかりと保っているし。


「そうなら良かったわ。じゃあ、行きましょうか……大悪魔の封印を再度、硬く閉めるためにね」


「うん、行こう!僕についてきて」


「……えっ?」


 女子と二人で世界遺産にもなっていそうな巨大建造物へ。

 なんか本当にデートみたいだ。

 そんな邪な考えても……いや、その考えだけによってほぼモチベが保たれている僕は意気揚々とアンリと二人で海底神殿の中へと入っていくのだった。

 立派な現像物が僕のモチベを上げる?残念ながら僕には立派な建物を見て本気で感動できるほどの感受性はないさ。あるのはただ、邪な下の考えだけさ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る