ロリ悪魔
精神生命体である悪魔。
彼らが住まうのは人間が住まうような世界とは次元が一つ、二つと異なる魔界である。
そんな魔界には悪魔たちがしっかりと文明並びに社会を築いて生活を送っているのだ。
悪魔たちの社会は至ってシンプル。
強ければ正義であり、その強さの順番で爵位を与えられる貴族性社会となっている。
なお、悪魔たちは生きている年数が多ければ多いほどに力を増していく性質を持っており、必然的に上の爵位を持つ者たちは長く生きた者たちということになる。
「……はぁー、クソクソクソ」
原初の一角。
この世界に存在する悪魔たちの中で最も早く生まれた七柱のうちが一人。
公爵級悪魔の中でも遥かに格が高い悪魔であるフロイデは苛立ちをあらわにしながら、自身の宮殿を歩いていた。
「あの、クソ女……面倒事をこちらに押し付けてきやがってぇ……っ!」
フロイデの頭の中に浮かんでくるのは先ほど自分の前にいた女。
同じ原初の悪魔の一角である女の姿である。
こちらへと一方的な要求を告げて帰っていった忌々しい姿を思い出すだけでフロイデははらわたが煮えくりかえりそうであった。
「あー、もう!うざったいなぁ!……何か、憂さ晴らし出来るようなことでも起きないかなぁ」
苛立ちの解消法を探そうとするフロイデ。
「んっ?」
そんな彼女の足元に、巨大な魔法陣が描かれ、光り輝き始める。
「はっ?これは悪魔召喚の……っ!?定命の存在が、この私を?」
その魔法陣を前にフロイデが驚愕の声を上げていた頃にはもう魔法が起動し、彼女は魔界の方から人間たちの住まう世界へと引きずり降ろされていた。
「おっ、来た」
召喚されたフロイデ。
そんな彼女の前に立っていたのは未だ幼子と見える人間の子であった。
「……ふふっ」
自分を召喚した人間を前に最初は驚愕していたフロイデであるが、よくよく考えてみれば今の状況は彼女にとって好ましい事態であると言えた。
「ちょうどいいじゃない」
ちょうど憂さ晴らしの相手を求めていたのだ。
ここはひとつ、愚かにも自分を召喚した人間の魂を弄び、甘美な悲鳴を奏でてみせよう。
そんな思いの元でフロイデが目の前の少年の魂を弄ぼうしようとして……。
「……えっ?」
絶望した。
「はっ?」
目の前の少年。
その体に内包されている絶望的すぎるほどの魔力の量に。
「……ぁ」
どうなって、どうなって……?
フロイデは大きく混乱し、困惑する。
長き時を生きて大量の魔力を蓄えてきた自分の魔力───それを軽々と超えていくほどの魔力を有するこの少年は、この一体何者で……いや、どんな思惑をもってこの、公爵級の悪魔である私を呼んだの……?
最も長きを生きる悪魔の一柱。
そんな大悪魔であるフロイデは目の前にいる少年を前に畏怖しながら、その心のうちに戦々恐々とするのだった。
■■■■■
「おっ、来た」
悪魔召喚の儀は無事に成功し、己の目の前に悪魔が召喚された。
「……」
あー、ロリか。
んー、ロリか。
「えー」
そんな悪魔を前に、僕が考えるのは目の前の悪魔がロリであったことへの落胆であった。
流石に彼女とするのはちょっとなしだな……いや、この悪魔が生まれたてほやほやで、これから成長していってくれるような悪魔だったら、行けるか?
成長を望めるか?ここからこの悪魔がボンキュッボンになってくれるか?
ワンチャン、僕ってば今の時点で寿命を300歳くらいまで伸ばせそうだけど……300年で悪魔って成長するか?
「な、何を……?」
そんな邪なことを考えていた僕の前で、何か震えているように見えるロリ悪魔が口を開く。
「あー、忘れていた。とりあえず、はい!契約!」
「えっ……?」
そんなロリ悪魔を見て、自分のやるべきことを思いだした僕は迷いなく目の前の悪魔と契約を結ぶのだった。
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