悪魔召喚
自分の婚約者であるアンヘルとの初顔合わせはただ僕が彼女に魔法を教えているだけで終わった。
なんか竜の対処から帰ってきていた父上とヴィザフの間で細やかな舌戦があったりしたとかも聞いたが、基本的に僕は何の問題もなく初顔合わせを終えることが出来た。
「よし。これで僕も八歳っと」
そんな初顔合わせから三年後。
定期的に魔法を教えてもらいに来るアンヘルとの逢瀬を重ねる中であっても、しっかりと僕は教えられるものを吸収しながら八歳へと成長していた。
「ふんふんふーん」
自分が貴族の子息として教わっていることは実に多岐に渡る。
基礎教養に礼儀作法はもちろんのこと、剣を使った戦いに魔法の使い方までしっかりと教育されている。
そんな中において、僕はこっそりと魔法の分野だけは前世として学問を修めてきた経験をフルに活かし、教えられている内容を完全に置き去りにして独走していた。
侯爵家の屋敷に用意されている豊富な書物を生かして魔法を学んでいるのだ。
「八歳となったらこれだよね」
八歳。
それはこの世界において大きな意味を持つ。
というのも、八歳になるとこの世界に存在する僕たち人間のように肉体がある物質生命体とは大きく異なる、精神だけの存在である精神生命体である三種。天使、悪魔、精霊のいずれかと契約できる年齢なのだ。
それら三種を召喚して契約し、彼らの力の一部を自分の肉体に込めるという秘術がこの世界にはあるのだ……まぁ、その秘術はとある種族だけの特権であり、人間はやらないんだけどね。
でも、ゲームの設定本ではあくまでその秘術の内容を知っているのがその種族だけであり、秘術の内容さえ知っていればどんな種族であっても使えると記載されていた。
「……しっかりと僕は秘術のやり方を覚えている」
秘術の内容もゲームの設定本に書かれていたので、僕であれば問題なくできるはずだ。
なら、やるしかないよねぇー?
「へへへ、彼女作るぞぉー」
ということで僕は悪魔召喚の儀式を行うための準備をしていた。
ちなみに、何故僕が天使、悪魔、精霊とバリエーションが豊富にある中で悪魔を選んだかと言うと、純粋のこの三種の中で悪魔だけは自分の彼女になってくれる可能性が微レ存するからだ。
天使に心というものは存在しておらず、精霊には性別がない。
そんな中でも悪魔だけは普通に心を有しているだけでなく、性別が存在しているのだ。
つまり、召喚した悪魔が僕の彼女になってくれる可能性がゼロじゃないわけでしょ?
なら、もう悪魔を召喚するしかないよね。
「これで良し、っと」
既に数年前から悪魔召喚を行うことは決めていた。
その準備も、予行演習も完璧だ。
「……いでよ、悪魔。我の願い、叶え給え」
僕はこれまでの予行演習を振り返りながら、床へと描いた巨大な悪魔召喚のための魔法陣へと魔力を流していくのだった。
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